2022年9月7日水曜日

資源エネルギー庁は汚染水の海洋放出を直ちに中止し、国家石油備蓄の空き容量に陸上保管して下さい。

  汚染水を、国家石油備蓄の空き容量に陸上保管することが出来ます。

 資源エネルギー庁は、「処理水の陸上保管は場所が有り出来れば、それがいい。ただ、福島第一原発に隣接する中間貯蔵施設は、双葉、大熊町の住民の心情を考えると、復興の妨げになるタンク建設は難しい。他県の受け入れる所は無い。」(2023年7月6日、会津若松市で行われた汚染水に関する住民説明・意見交換会の中で木野参事官、談)と言います。しかし、事故から13年たった今でも、帰還者は、わずかに双葉町、約100人(震災前、約7,000人)、大熊町約700人(震災前、約1万4000人)です。周辺6市村でも、帰還率は約2割です。しかも、強制避難基準の20ミリシーベルトを帰還基準に当てています。スリーマイル、チェルノブイリでは、考えもしなかった帰還政策は失敗です。今なお、緊急事態宣言下にあります。避難住宅からの追い出しを掛けています。ついには、自宅の汚染がとれず帰れず、退去できない避難民を東京都をダミーに訴える始末です。だから、資源エネ庁の言っていることは、「復興の演出の邪魔になるからタンクを立てられない」と言っていることになります、

 そもそも、このような事態になったのは、復興を演出するために、第一原発を事故の痕跡の目立つ石棺に出来ない、増え続ける汚染水タンク群が立ち並ぶのはまずい流すほかない。そうすることが、復興の名の下に、あたかも被害者の意思のように、国民に思わせながら。帰還を無理やり強制する政府の今のあせりは、柏崎狩羽6、7号機、東海第二原発、女川2号機の再稼働というGX原発回帰の初関門を突破するためです。政府の3.11後の施策は全て、福島第一原発事故を小さく見せるという一点です。

 両町に在る中間貯蔵施設の一角に、今も進行中の事故の、被害をこれ以上広げないために、それも、世界に拡大しないために汚染水を溜め置く陸上タンクを建設することは、しごく自然なことです。それでも、資源エネ庁は、出来ないと言い張るなら、国家石油備蓄の空き容量に汚染水を長期陸上保管する方法を検討し是非実行に移して下さい。

 エネルギー価格の高騰を受けたIEA加盟国の備蓄石油の協調放出により、政府は2022年9月に、国家石油備蓄から151万klを放出し終えました。初めての国家石油備蓄の放出で、備蓄日数にして145日分ある中の、5日分です。タンクは、今、空いた状態です。今ある汚染水は約130万トンですから、この空き容量に丁度、入ります

 国家石油備蓄に汚染水を貯めるなど、突飛に聞こえるかも知れませんが、そうではありません。その理由は三つあります。(尚、以前、公明党もタンカー備蓄を検討していました)

 一つには 国家石油備蓄は、汚染水の処分について、前面に立ってあらゆる対応を取るという国が、備蓄基地を所有していること。

 二つには、国家石油備蓄基地のうち、陸上タンク方式のものの操業管理を、汚染水の所有者であり、管理責任のある東京電力(直接にはJERA)が行なっていること。

 三つには、130万トンの備蓄石油を放出した空き容量に、石油以外の何かを貯めなくてはならないこと。(石油は貯められない。空きっぱなしにも出来ない。)

順に説明します。

 国家石油備蓄は、石油公団と石油元売り会社との半官半民の石油備蓄会社に、国が、所有する石油を寄託する形でしたが、特殊法人改革(公団民営化等)で、2001年に、石油公団が廃止され国の直轄事業となり、石油備蓄基地は国に資産移転され国の所有となりました。備蓄基地の使い方は、汚染水処置について前面に立つと言う国の随意になったわけです。

 石油備蓄基地の操業管理業務は、基地の国有化に伴い寄託事業から委託事業に変わり各石油備蓄会社の100%株主となった各石油元売り会社に、国が、金属鉱物資源機構(JOGMEC)を介し、再委託してきました。2018年に、全国にある10基地(8会社)の内、陸上タンク方式の4基地(4会社)の操業管理業務を、石油元売り会社に代わって東京電力、直接にはJERAが応募落札しました。設立以来の「何々(地名)石油備蓄株式会社」という社名を残したまま、JERAが四つの操業管理会社の完全親会社になり、本社機能を、東京、横浜に分散していたものを、日比谷国際ビル9階のJERA東日本支社の一角に統合し、4基地を一元的に操業管理しています。

 国家石油備蓄は、1998年に5,000万klを達成して以後、その水準を維持しています。義務・目標量は、直近1年間の石油輸入量の90日分のところ、今の備蓄日数は145日分にもなり、大幅に過剰です。3.11後、たびたび、事業仕分けや行政仕分けで、税金の無駄遣いを指摘され備蓄量を削減するよう命令が出ていますが、資源エネルギー庁は少しも応じて来ませんでした。今回が国家石油備蓄からは初めての放出です。石油輸入量が減る中、備蓄日数は今後、更に増え続けて行きます。従って、政府は、放出後の空き容量に石油を積み戻すことは出来ません。かといって、空きっぱなしにすれば、税金の無駄が白日の下になります。空き容量を石油とは別の何かに有効利用する必要が有るのです。ここに汚染水を貯めることが出来ます。全体の備蓄量の削減も喫緊の課題です。

 国が所有し東電が管理運営し汚染水を受けるに恰好な国家石油備蓄基地の空き容量は、正に、国が株式を持って処分の前面に立ち東電が管理運営所有する福島第一原発の敷地の汚染水タンク群の延長と言えます。福島第一原発の敷地の溢れると言われる汚染水タンクが、まだ他所に膨大に有るわけです。国と東電が責務を持って、汚染水を海洋投棄せず引き続き、とどめおくことが出来る所です。国家石油備蓄の陸上タンク4基地が所在する苫小牧、秋田、福井、志布志の何れかの自治体に、陸上保管してもらうわけではありません。その自治体に在る、国と東電の倉庫に搬入、蔵置するだけのことです。汚染水の県外の陸上保管であっても、他県の汚染水受け入れではありません。

 放出設備の海底トンネルは無駄にはなりません。これを利用して、国家石油備蓄基地へ汚染水の移送を海上から一挙に行えます。放出設備の突端の、まだ先500メートルの沖合(中型タンカーの満載吃水の水深を確保)までホースを延ばし、一点係留ブイ払出設備を付けてタンカーに積み移送するのです。追加投資額は40億円ぐらいでしょう。3ヶ月ぐらいで、中型タンカーで10往復、130万トン以上を移送出来ます。放出設備から小型タンカーで受け沖合に運び、中型タンカーに瀬取りする方法も有ります。

 陸上大型タンク保管案や基地外保管案が、申し訳けのように検討された時に挙げられた却下理由を、この方法は全てクリアしています。汚染水の処置は、福島第一原発事故の処理という緊急事態宣言下の対応です。法律に違うからと、或いは、少々の困難により避けられることではありません。政府が法律の制約を利用し自分の都合のいいように事を運ぶ作為がしばしば福島第一原発事故後行われています。法律は緊急な状況変化によって齟齬をきたすもので、その時は柔軟に対応すべきものです。憲法に優先する法律は有りません。

 国家石油備蓄の膨大な過剰在庫を取り崩し、石油を放出消費し、空き容量を更に増やすことは自由自在です。否、取崩す必要が有ります。50日分以上の過剰在庫があるからです。取り崩したあとに、今後、発生する汚染水も貯められます。備蓄日数9日分の空き容量を加えれば、1日70トンの汚染水が発生し続けても、トリチウム濃度が千分の一に減衰する期間の120年間(半減期12年を10回重ね)に、発生する汚染水を全て貯められます。使う容量は、50日分以上の過剰在庫の内たったの14日分(5日分+9日分)に過ぎません。これは、480万klで、ほぼ10基地の国家備蓄基地の1基地相当です。

 トリチウムよりも半減期の長い核種の放出は、120年経過しても危険です。これらを海に流さないために、少なくとも、この120年の内に、デブリを取り出し終えるか、出来なければ、デブリと圧力容器を環境から遮断するよう、底のある地下埋没型石棺に閉じ込める方針変更を、その時には、決断しなくてはいけません。トリチウム分離技術の実用化もあるでしょう。それまで、とにかく海に流しません。

 国家石油備蓄への陸上保管という、40億円ぐらいしか、お金の掛からない、この簡単な方法をとるだけで、政府としては、漁業者との約束を果たせ、風評被害対策の8百億円の基金は必要無くなり、430億円かけて作った放出設備も無駄になりません。そして、近隣諸国に道義を尽くせ、太平洋諸国の信頼を損ねず、これからも、正々堂々と紛争防止のための意見を、国として言っていけます。国家石油備蓄の空き容量の有効活用は、政府にとって願ってもない方法だと思います。何よりも、海洋生物の食物連鎖を通じ生物濃縮した海産物を人が食し内部被曝し、遺伝子を損傷する危険なトリチウムを無害化することが出来ます。




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