2015年6月26日金曜日

エネルギーミックスパブリックコメントについて

再生可能エネルギー、特に太陽光の「贔屓の引き倒し」が行われたエネルギーミックス策定だった。政府は原発を守るために巧妙に、太陽光を一見普及支援している素振りで結局無用のお払い箱にしようとしている。

固定価格買取制度(FIT)の買取期間20年は稼働期間とは何の関係もないはずなのに安易に同じにされた。固定買取価格は正しいコストに若干のインセンティブとなる利益をオンして決まる。稼働期間に買取期間を当てはめては、買取期間経過したら、もう使わないのだから、正しいコストは求められない。コスト単価は稼働期間の内にコストを回収できる収入単価であるから、稼働期間が短縮されればコストが増える(低金利下においては、反比例的に)ことは誰にもわかろう。本当は、買取期間などより遥かに寿命が長くて、FITが不要なほど安い(注1)ものをわざわざ掛け離れた高い価格で、国民が負担する賦課金で、買取ることに繋がっている。そして、その高い買取価格自体が太陽光のコスト単価に擬せられる。しかしエネルギー選択のためのコストは導入促進費用を含まない素のコストでなければならない。ましてや不当に高すぎる導入促進費用をやである。FITの改善の検討には土台及ぶべくもなく、太陽光の安さは最初から無視された。

系統安定の問題、即ち送電網の制約と、天候に影響される発電量のばらつきは、自然変動再エネと名打たれた太陽光と風力の、何の解消策も検討されないまま除去不能な決定的欠点とされた。太陽光の不安定性のみを言い、夏場の晴天時のピーク需要を確実に救済することが言われないのはおかしい。つまり、エネルギー選択において需要と相関性の要素は誰も言わなかった。そして家庭用蓄電池の将来の技術革新と価格低下の要因は考慮されなかった。太陽光と風力の蓄電のための揚水発電利用、原発廃炉に伴う余剰送電網活用、太陽光や小型風力の地産地消電源は本来、送電線自体を不要とすることが、歯牙にもかけられなかった。ましてや、蓄電池と太陽光の組み合わせで個々に家庭用電力を賄えば、送電容量をとらない。地産地消電源による自給が、凡ゆる安全保障上の観点で絶妙であることが、とりたてて論議されなかった。これらは委員の意見の端々に出ても、事務局は真面目に取り上げないで、はぐらかして、委員も深く追究しないのである。大事な所で「言いっ放し、聞きっぱなし」のエネルギーミックス策定会議だった。

こうして、この「嘘のコスト」と「系統不安定」を障害として、2030年の太陽光発電は7%、749億kwhに止められた。この数値は、接続保留の原因となった20146月時点の認可量7,178kw(792億kwh相当)で既に叶えられている。この大半が去年から今年に掛けて、なし崩し的に連係されており、仮にこの認可取り消しがゼロとすると、あろうことか2030年まで今後15年間の認可をゼロとするものである。風力は僅かに1.7%に止め、両者合わせて僅かに8.7%である。原発の比率を上げるため、こんな出鱈目に作為されている。

原発は事故のみならず被弾の惧れが有る状況では、全基の長期停止が必至であることから、安定供給の点で最も脆弱なことが一言も触れられないのである。そして原発のコストが安いのは、事故が起こらないだろう短期に賭ければということだけである。

このように今回のエネルギーミックスは先に決めた基本計画通り「原発やりたい」が先に有りきの、露骨に太陽光と風力潰しに走ったものである。
国民はこのような策定経緯をよく認識し、このエネルギーミックスが間違っても再稼働や運転延長を助長し、太陽光のブレーキになるのを許してはいけない。

前述の2014年6月時点の認可量は殆どが産業用の非住宅用である。屋根はまだたくさん空いている。これからが、分散型で地産地消で消費者参加型の住宅用の太陽光の本格的出番である。大企業や外国資本に甘い汁を吸われた賦課金は、住宅用であれば、国民自身に戻ってくる。住宅用が飽和すれば原発の発電量にも匹敵する。住宅用太陽光の今後設置分は同量が原発に置き換わる計算となり、設置者ははっきり原発NOと言うことになる。国民が太陽光の本当に安いことを知って、一人一人、屋根や遊休スペースに太陽光を設置し、自ら使う電気をいつでも自給できるようにし、原発の電気を断ろう。
「嘘のコスト」に気付き、国、電力会社、国民が一丸になり太陽光を本気で推進すれば、今からでも改めれば間に合う。「太陽光発電を国民負担なく普及する法」や「固定価格買取制度の修正」(注2)について「荒木福則ブログ」に書かれているのでお読み頂きたい。また、「系統不安定」については、家庭用蓄電池の価格低下が将来期待できる。米国テスラモーターズは太陽光発電システム価格の十分の一のものを既に開発した。蓄電池とセットの住宅用太陽光で、分散型で地産地消型エネルギー需給を目指すことで解消できるものである。

以上が私の提出したパブリックコメントであるが、太陽光コストに関する異議、家庭用蓄電池による地産地消の有望性など、何も取り上げられなかった。7月16日資源エネルギー庁が公示した「パブリックコメントの結果」は長期エネルギー受給見通し小委員会で募集した「国民の声」のように意見を一個一個そのまま掲載するのでなく、カテゴリー(50項目)別にした意見に対し事務局の見解を併記する形である。その見解は、ただ、その点については自分達の考えはこうでこうしたという説明である。件数のデータも示されていない。これでは、パブリックコメントが政府案の弁明の機会に堕している。高村委員達も最後に期待したパブリックコメントは、野田政権時の原発2020年ゼロの元になったパブリックコメントの役立て方のものである。
今回のエネルギーミックスの肝要は原発を「やるやらない」かの一点である。此の期に及べば「やるやらない」の言い尽くされた理由よりも、それを国民一人一人が如何ほど強く思うかだけである。「やるやらない」の数についも、ないがしろにして何の意味があろうか。小委員会で応募された「国民の声」から、その件数を入手できるので下記に集計した。政府案以上とした意見の半数以上が、小中学校の教育現場を利用して子供達に作らせ送らせたものと見られることを付け加える。

                            (意見の件数)
   応募時期      原発ゼロ%   政府案(原発20%   全体
              (注3)   〜22%)以上(注4)     
(1月27日〜6月1日)  490      161      890
    (割合)     (55%)    (18%)   (100%)

(注3)原発ゼロ%意見の内容は再稼働しないが98%である。つまり、2030年
    と言わず今からゼロである。
(注4)20%以上は、3基の延長に加え運転期間延長が必要になる。
                       2030年の原子力発電比率 
  ・再稼働無し                     0%
  ・運転期間40年を守る場合 
     廃炉決定済みの炉を除く43基稼働       12%
     上に加え炉3基(大間、島根3、東通)が稼働  15%
  ・運転期間60年に延長の場合 
     廃炉決定済みの炉を除く43基稼働         22%    
     上に加え炉3基(大間、島根3、東通)が稼働  25%


(注1)「太陽光の発電コストは15.2円/kwhと安い」参照
(注2)「太陽光発電を国民負担なく普及する方法
    「固定価格買取制度の修正」       参照