2022年6月15日水曜日

電力需給逼迫の対策は、「原発9基の稼働」ではなく、国が「予備率算定不正」を認め、原発9基分の休止中の石油火力発電を、冬のマイナスの東電管内予備率に算入すること。


 
(続・続)

 電力需給逼迫の原因の一つは、「大手電力会社が火力発電の休廃止を進めたこと」は
 ”間違い”。            正しくは、「休止した火力発電を再稼働しないこと」


 JERAは、保有する「石油」火力発電の全て 15基、合計出力、1000万kw、燃料 重・原油を、約5年かけて、2020年4月までに長期計画停止
  
    広野火力4基 1号機(60万kw),2号機(同左),3号機(100万kw),4号機(同左)
  鹿島火力6基 1号機(60万kw),2号機(同左),3号機(同左),4号機(同左)
           5号機(100万kw),6号機(同左) 
  大井火力3基 1号機(35万kw),2号機(同左),3号機(同左)
  渥美火力2基   1号機(70万kw),2号機(同左)
   この内、大井火力を今年3月に廃止し、現在、12基、900万kw、原発9基分

  JERAの説明
 これらは、確かに古いが、メインテナンスが続けられており、使用前点検等に、基によって、1、2ヶ月から半年掛かるが再稼働出来る。 順次、廃止していくことも考えていた。 
  今、電力会社間でLNGの取り合い。
 LNG火力の長期計画停止したもの(姉崎5号、知多5号)から先に動かすが、
 これらの石油の 長期計画停止したものは、LNGの次に動かせる。

 JERAは、東電(送配電事業者の「東電パワーグリッド」)から「電源別の電気」の注文を受けて、その「電源」を動かす。石油火力発電を再稼動するしないは、東電から石油火力電気の注文が入るかどうかに依る。
  予約注文も含め、LNGと石炭火力の電気の注文が入るだけ。東電(東電パワーグリッド)から、石油火力電気の注文が、2020年4月停止して以来、今まで、一切無い。
 需給が今夏より厳しい、マイナス予備率の来冬(1月)も、これらの石油火力は動かされない。
   
    東電管内の来年1月のマイナス予備率の安全予備率を越えてメークアップする過程
          (注)火力60万kw1基が、ほぼ1%。
     マイナス0.6%(@5月25日 電力広域的運営推進機関発表)
    →1.5%(@6月28日 広域的機関 発表 
        要因:新地火力(100万kw)3月地震からの復旧間に合う他、赤穂火力、
        東京東北間運用容量増)    
    → 4%(7/20萩生田経産相 東で190万kw手当てと発言。
                        姉崎5号(60万kw)、知多5号(70万kw) がまた使える。
        後1基は資源エネ庁教えない)
    → 5%(新設 姉崎1号(65万kw)2月稼働 の試運転のkwhが1月に使える)

  他の、どの大手電力会社も、石油火力発電を必要に応じ機動的に使っている。長期計画停止中の石油火力は有るが、安全予備率を確保した上で止めており「大丈夫」と言っている。
 電力会社、安定供給責任が使命。JERAも同じ。
 マイナス予備率になっても、長期計画停止の石油火力を使おうとしないのは東電だけ。

 誰が、JERAの石油火力を再稼働しないのか。
   →   国有化された東電だからこそ出来ること。 東電の支配株主の国が、JERAに石油火力電気を注文しないと決めている。(資源エネルギー庁の画策)

 何のため 
   → 需給逼迫を演出して、BWRの再稼働をやりやすくするため。特に東海第二原発(今冬、再稼働予定だった)と柏崎刈羽原発

(追記)
 このJERAの石油火力を需給逼迫対策として動かすコストは ”小さい”。
  短期の待機運転(太陽光発電が予想に反した時の出力アップ)→  燃料費最小限
  高経年で減価償却済み   →  固定費は殆ど只 
     「太陽光発電に圧されて火力発電休廃止」 
       → しかし、バックアップ調整する時の火力の稼働率低下のコストも殆ど只

 石油の重要性 
 → 化石燃料内での「多様化」の必要性( LNG、石炭、石油)  
  太陽光発電の変動の調整を通じて、その普及をもバックアップする電源

電力需要の減少 →  後、2、3年で、電力需給逼迫を材料に、原発再稼働を言うことはできなくなる。→ 資源エネルギー庁の焦り





 1. 「電力需給逼迫」は、政府と東電が原発の再稼働を進めるために、作り出しているもの。

 今、「電力が不足するので、原発の再稼働が必要だ」という論調が盛んになっている。しかし、「電力需給逼迫」は、作られたものだ。東電は、火力発電部門を担当するJERA(中部電力の同部門も吸収統合)の石油火力発電の全て15基、合計出力1,000万kwを2020年4月までに休止した。原発10基分で、いまだに1基も動いていない。大手電力会社とも、火力発電を、石油を休廃止し、LNGと石炭に絞っている。原発を再稼働しなくても、これらの石油火力発電から再稼働すれば、需給逼迫の心配は全く無い。

 東電の15基の石油火力発電は、高経年の発電所だが、稼働できるよう維持管理は続けられており、立ち上げるのに、基によって1、2ヶ月から半年掛かるが、再開出来ないということはない。動かせるけど動かさないのだ。供給予備率の算定では、これらは、全て動かないことになっている。

 去年の冬の需給逼迫を前に、政府は申し訳のように、火力発電所の休廃止を事前届出制にすると広報し、東電はLNG火力の姉崎発電所5号機60万kwを再開しただけである。そして、3月の需給逼迫が起こった。

 これらの石油火力発電を休止した理由を「増える太陽光発電に押されて、石油火力発電の収益性が下がったから止めた」と説明している。太陽光発電の日照に応じ変動する発電量を、全体需給の一致を取るよう火力発電がバックアップ調整する。太陽光発電が増えてきて、この調整コストが嵩み、石油火力発電の収益性が悪化して止めたという意味だ。電力の安定供給にかまわず、しかも、他電源に比べ格安の太陽光発電を国民が賦課金を負担して導入しようと努力しているのに、安易にやってはいけないことだ。ましてや、次に述べるように、この調整コストは殆ど只だ。

 需給が一致して火力発電が電気を供給しているとしよう。そこへ、太陽光発電の電気が加われば、需給の一致を崩さないよう火力発電は同量の電気を、燃料フィードを落として減らす。燃料フィードを落とした分、火力発電の稼働率が低下する。即ち、固定費が回収出来ない。しかし、高経年の15基の石油火力発電所は、減価償却を終わり、殆ど固定費は掛からず、調整コストは殆ど只だ。

 休止した理由として、高い石油価格による収益悪化やCO2のことを言っているものもある。しかし、需給逼迫対応では、その影響は最小限に抑えられる。太陽光発電の突然のバックアップの時や需給逼迫が予想される時に、素早く出力を上げられるよう最低限の石油燃料フィードで待機運転する石油火力発電を複数基、準備しておけば良いからだ。

 上に理由について述べたが、これが、どうであれ、政府はこれらの石油火力発電を動かせるのに動かさないで、予備率から外しマイナス予備率を作り出し、そのことを国民に知らせず、「電力需給逼迫」を煽り、原発を再稼働しようとしている。

 

(続)

 6月23日の朝日新聞朝刊の「参院選 政策の分岐点 エネルギー」を読んで思った。

 記事の大筋は、「太陽光発電の普及で稼働率の低下した古い火力発電の休廃止が進んで、東電管内の来年1月の供給予備率がマイナスになる。電気代が上がっている。この状況下、岸田政権が原発を最大限活用する方針を打ち出した。しかし、原発も課題が多い。再エネも難しさは多い。政府は参院選で争点になるのを避けるが、真正面からの議論が必要。」というものだ。

 「太陽光発電の普及で稼働率の低下した古い火力発電の休廃止が進んで」というフレーズを何故、疑問視しないのだろう。何故、簡単に肯うのだろうか。事によっては、保健所を減らして失敗した大阪のコロナ対応と似た事かもしれないのに。エネルギー基本計画の2030年の電源構成は、火力発電のLNGと石炭は2019年の7割から4割、石油は2019年の7%から2%だ。石油火力について、一足飛びにやったのではないか。電気の安定供給の責任を放棄して、否、原発の再稼働如何が決まる頃に合わせて、需給逼迫が原発の稼働で救われるように。

 東電の火力発電部門(原発、水力、再エネを除いてLNG、石炭、石油だけ)のJERA(中部電力の同部門も吸収統合)は、火力の内、全ての石油火力を止めた。石油火力発電15基、合計出力1000万kw、を2020年4月までに休止した(注)。原発10基分だ。いまだに1基も動いていない。今、政府が需給逼迫対策として再稼働している火力はLNGと石炭火力で石油は一切無い。尚、2022年3月末に大井火力3基105万kwを廃止。

 休止中の12基の石油火力発電は、メインテナンスが続けられており、基によって、使用前点検等に1、2ヶ月から半年かかるが、再稼働出来る。LNG火力から順に石油火力も再稼働して行く。JERAは、東電(東電パワーグリッド)から、電源別に電気の注文を受けて、その電源を動かす。従って、石油火力発電が動くのは、東電から石油火力電気の注文が入るかどうかに依る。今の所、東電からLNG火力電気の注文は有っても、石油火力電気の注文はいつまでたっても無いそうだ。来冬まで半年以上あり、注文さえ確定させておけば、これらの石油火力15基どれもが再稼働に間に合うが、来冬の予備率の算定に全く入っていない。

 他の大手電力会社は、どこも石油火力発電、必要に応じ柔軟に使っている。止めている石油火力があっても、安全予備率を確保した上で止めており、大丈夫ということだ。JERAの姿勢・対応と同じだ。予備率がマイナスになっても、石油火力を止めたままで動かさないのは東電だけである。安定供給が使命の電力会社が、将来の予備率がマイナスで、なす術が無いということがあるだろうか。東電の支配株主の国がJERAに石油火力電気の注文を出さないと決めているのだ。国は国民を騙しても、停電で脅かしても、原発を再稼働したいのである。


 これらの、石油火力発電の12基の内、5基でも、太陽光発電の突然のバックアップや、逼迫時に速やかに出力を上げられるように、待機運転さえしておけば十分だ。燃料フィードは、せいぜい2ヶ月間で、しかも最低限のフィードで、燃料コストとCO2は、あまり心配しなくていい。固定費は高経年で減価償却は終わり殆ど掛からない。固定費が殆ど無いので、太陽光発電の調整のため火力発電の稼働率の低下によるコスト、即ち調整コストも殆ど無い。来冬まで、まだ半年ある。今、確定予約注文を出して、予備率に算入すればいい。全く需給逼迫の心配はない。

(注)

 JERAの火力発電所

      LNG火力発電      4,572   万kw 

    石炭火力発電    730    万kw

    石油火力発電    1,005   万kw   

            計       6,307    万kw


  JERAの2020年4月までに休止した石油火力発電所

  (2014年月から段階的に長期計画停止)

           出力(万kw)   燃料    運転開始  

  広野火力 1号機   60.0      重油・原油  1980年4月  福島県双葉郡広野町

       2号機   60.0    同上     1980年7月

       3号機   100,0    同上    1989年6月

       4号機   100.0      同上    1995年1月

  鹿島火力 1号機   60.0      重油・原油  1971年3月  茨城県神栖市

       2号機   60.0    同上     1971年9月

       3号機   60,0    同上    1972年2月

       4号機   60.0      同上    1992年4月

       5号機   100.0   同上    1974年9月 

       6号機   100.0   同上    1975年6月

  大井火力 1号機     35.0       原油    1971年8月  東京都品川区八潮

       2号機    35.0   同上      1972年2月 2022年3月31日 廃止

       3号機    35,0     同上      1973年12月 

  渥美火力 3号機    70,0   原重油     1981年5月  愛知県田原市

       4号機    70.0      同上     1981年6月

   計   機数 15機 1,005万kw  


 



2022年6月9日木曜日

電気が不足するからといって、原発など再稼働する必要は全く無い。大量休止した石油火力発電を再稼働すれば済むことだ。

 6月8日(水)のNHK 朝イチおける、水野 唯氏による説明でも、6月9日(木)の朝日新聞 社説によっても、電気が不足する理由を、次のように説明している。太陽光発電が増加し、その変動調整のために火力の稼働率が低下し採算が悪化し止めたからだと。そう、確かに、東電と中部電力の火力発電部門を吸収統合したJERAは、15基、1,000万kw有った石油火力発電所を2020年4月までに全て休止した。原発10基分に相当し、いまだに1基も再稼働していない。再稼働したのはLNGの姉が崎火力だけだ。JERAは全ての石油火力発電を休止した理由を「太陽光発電に押されて石油火力発電の収益性が下がったから止めた」と説明している。「押されて」とは、稼働率低下と同様な意味だろう。太陽光発電のせいにされている。しかし、これら15基の石油火力発電所は減価償却年数の15年をとっくに経過し固定費は発生しない。従って、太陽光発電の変動を調整する電源の設備利用率(稼働率)低下にかかるコストは、ほぼゼロである。

 簡単に太陽光発電の調整コストについて説明したい。需給が一致して火力発電だけで電気供給している時、急に陽が照り出し太陽光発電の電気が加わったとしよう。それに合わせて火力発電は同量の電気を、燃料フィードを落として減らす。火力の電気は太陽光電気に置き換わり、その分、火力の燃料費、則ち変動費(=可変費)が無くなる。調整にかかるコストは燃料を減らした時の固定費だけだ。変動電源調整のための、火力発電の設備利用率(稼働率)低下のコストと言われるものだ。調整火力電源の、それ以外の固定費と可変費は、元々の火力発電自体のコストであり、太陽光発電とは無関係だ。太陽光発電の調整に掛かるコストは、大きくは火力発電の固定費だけである。この固定費の一部が回収出来なくなるコストが稼働率の低下するコストである。

減価償却を終わり、殆ど固定費の発生しない高経年の石油火力発電所なので、可変費は前述の通り掛らないので、殆ど只で太陽光発電の調整に石油火力発電を使える。

石油火力を休止した理由は、太陽光発電の導入を難しくするためと、原発再稼働必要論醸成のためである。原発と太陽光発電は相互排他である。ひとえに、原発再稼働のためである。6月9日、JERAに確認すると、石油火力発電を再開しないということでなく、需給逼迫に備えて、LNG火力から順に再稼働していくということである。原発を再稼働する理由がない。


 石油がLNGより燃料コストやCO2排出が高い難をいうなら、多数の石油火力発電を最低限の石油燃料で、太陽光発電の調整の時の出力だけに備えて、待機運転しておく方法が有る。そうすれば、石油燃料をミニマムに抑えながら、太陽光発電の変動の調整幅を大きく取れ、太陽光発電が導入にし易くなる。使いきれない電気が出力抑制されたり、揚水発電に蓄電し切れず捨てられたりすることが最小限に抑えられる。電力需給逼迫は無くなる。一定発電しか出来ない原発のベースロードの下駄が、太陽光発電の調整幅を狭めている。その上、太陽光電気は余れば、その場で捨てられるが、原発電気の夜余る電気は、少なくとも送配電費用を回収する低料金で買われる。最悪、余っても、必ず揚水発電に蓄電され捨てられることは無い。需給の下駄を最小化し、太陽光発電の変動幅を最大化し、太陽光発電の導入を加速する。ピーク時の抑制は、あまり気にせず、導入を拡大することだ。単体でも過積載として既にやっていることだ。