2022年12月7日水曜日

電気は、もう十分に足りており、原発は、ずーと全く必要ない。政府と大手電力会社が石油火力発電を排すのは、原発推進のために、太陽光・風力発電にストップをかけること。今、原発をやめて、太陽光と風力発電の本気の普及に向けて舵を切る時。

 

(上)

 5月頃から、夏よりも冬の方が需給逼迫が厳しく大変だと騒ぐ根拠になっていた、東電管内の来年1月(来月)のマイナス0.6%の予備率は、今は、安全予備率の3%を超えて4.1%に上がっています。要因は、福島県沖地震で止まっていた新地火力1、2号機の復帰や、姉崎火力5号機を夏に続いて冬も再稼働すること等です。来年前半に新設される姉崎1,2号機、横須賀火力の試運転の電気(kwh)の利用を折り込めば、6%にも上がります。政府は何故か、まだ心配と言っており節電要請を出しました。この逼迫対応で再稼働されるものも、稼働しているものも、LNG火力か石炭火力だけです。これらより他にJERAの石油火力の全て、900万kwが在ります。広野火力1〜4号機、鹿島火力1〜6号機など12機で、原発9基分で予備率にして15%です。これを、政府は隠しています。

 東電管内の火力発電会社のJERAは全ての石油火力発電15機1,000万kw(この内、大井火力の3機計100万kwは本年3月に廃止)を、2020年4月までに約5年かけて計画停止しました(注)。もちろん、老朽火力が多いですが、広野火力3号機(100万kw)1989年、4号機(100万kw)1995年、鹿島火力4号機(60万kw)1992年と、わりと新しいものも有ります。東電管内のピーク需要約6,000万kwの1.000万kwです。これらは将来の稼働に備えて全て維持管理が続けられており、動くのに、政府(政府というより資源エネルギー庁)は1機たりとも使わないと決めて隠し、需給逼迫を演出しBWR原発を再稼働しようと、ここ数年、画策して来ました。続けて今、運転期間の延長と原発のリプレースを決めてしまおうとしています。     

 因みに、同じことを今、九州電力が、川内原発1、2号機の40年運転期間の延長のために、豊前石油火力他を止めて、やっています。

 火力、中でも一番切りやすい、石油火力を排すのは全くもって、間違いです。極めて短い時間の需要ピーク時や需給接近時の供給力調整は、出力を柔軟に上げ下げ出来る火力、特に石油火力が行います。また、太陽光や風力発電の発電量変動を吸収調整するのは、火力です。二つの意味の調整の、特に後者のために、石油火力のkw(設備能力)を確保しておき、太陽光や風力発電を存分に普及させなければなりません。石油火力のkwh(発電量)は、後述しますが、自ずと少ないんです。もちろん、一定発電しか出来ない原発には、「前者の調整」は出来ないし、逆に「後者の調整」の幅を狭め、太陽光発電の抑制を増やし、火力発電を押し退けてしまいます。従って、政府と電力会社のやっている石油火力の排除は、太陽光や風力発電の普及にストップをかけます。もちろん、「後者の調整」は、蓄電システムやデマンドレスポンスに置き換えていく過渡期に必要なものです。

 ところで、6%まで上がった東電管内の1月の予備率には、太陽光発電が供給力として殆ど含まれていません。全国の電力需給の調整と予備率の管理を担当する「電力広域的運営推進機関」によると、「安定的に見込める供給力」を評価して、1月は4%の調整係数を、設備容量に乗算したものを予備率に織り込んでいるということです。「太陽光発電を導入することにより安定電源を代替できる量」ということですが、太陽光発電の稼働率であれば1月は9%(年間は13%)だから、4%という調整係数もよく分かりません。管内の太陽光発電の最大発電実績は1,400万kwですから、仮に設備容量を1,500万kwとしても、その4%、僅かに60万kwhしか見込んでいないわけです。しかし、とにかく、晴天であれば、冬のピーク時は設備容量の6、7割、900万〜1,000万kwh は発電します。雨天の時のことを考えて予備率には見込めないということでしょう。しかし、JERAの石油火力900万kwで、需給逼迫時の出力アップに備えて短期間、待機して「後者の調整」をすればいいです。石油燃料消費量も最小限に抑えられます。ましてや、JERAの石油火力は、設備の償却を既に終え稼働率低下に伴う損失は殆ど有りません。「電力広域的運営推進機関」は、「JERAの石油火力は、東電パワーグリッドが申告する供給力の中身の問題なので関知しない」と言います福島第一原発事故後、原発を代替するエネルギーにしようと、国民が賦課金を負担して普及してきた太陽光発電を、政府は端から予備率に生かそうとしないで、その予備率が低いから原発が必要と言っているわけです。

 また、東西連系線の容量増強をわざと遅らせ、原発のために太陽光電気を捨てています。今頃になって、原発回帰の支持になると見て地域間連系線の新増強計画を発表しています。

 (注)政府・電力会社は「太陽光発電が増え、その変動を吸収調整するため稼働率が低下し経済性が悪化したから石油火力発電を廃止或いは停止した。」と言っています。


(中)

 福島第一原発事故を負っており、ウクライナ紛争を見ている、今、私達は、太陽光発電と風力発電の本気の普及に向けて舵を切る時です。調整電源となる火力発電を確保しながら。

 太陽光発電の普及は政府の言うカーボンニュートラルのためではありません。太陽光発電は、

 まず、安いからです。原発や火力発電のように値上げしなくていいです。太陽光発電のコストは、今、kwh、10円以下です。これからまだ、下がります。太陽光発電の耐用年数は35年くらいはあるのに、政府は、長年、20年と誤魔化してきました。変動費の少ない電源のコストに耐用年数は重大です。火力発電の、これから上がるのは変動費です。

 太陽光発電を普及する二番目の理由は、一極集中発電から自立する電源だからです。マイクログリッドは再エネと蓄電池が核になります。

「再エネ賦課金」は太陽光発電のコストでもなければ、普及に掛かる費用でも有りません。固定買取価格が電気料金の半分以下(事業用11円、住宅用17円/kwh)になっても尚、再エネ賦課金がかかること自体おかしいと思いませんか。「再エネ賦課金」は止まっている原発の維持費になっています。2012年、全量買取制度が始まって以来、19兆円の賦課金を国民が負担しています。ほぼ、同じ期間の停止中の原発の維持費が12兆円です。再エネ買取において、固定価格での買取費用を回避可能費用まで、賦課金が原資で補填される大手電力会社は、その交付金を受けて、それを原発の維持費に使っています。固定価格買取制度の開始直後2,3年の冗長な固定買取価格は、制度の意義とは裏腹に、太陽光発電を排除し原発を進めるため、経産省が太陽光発電のコスト高を放任したのです。そして、高い交付金を20年間受けて原発維持しながら、同時に、これを、太陽光発電の汚点、否、固有の欠点として、いつまでも宣伝しているのです。しかし、今、大事なことは、この冗漫な固定買取価格の賦課金は埋没コストだということです。

 原発のコストが安いと言うのは、ドローバック(注1)を費用としてカウントしていないか、費用を先送りしているだけのことです。それは、次の三つのことを挙げれば十分でしょう。放射能の影響が未解明なこと、核のゴミ処分が未解決なこと、原発は必ず過酷事故を起こすこと(注2)。これらのドローバックの金額評価は仕切れるものでなく、出来る範囲でさえ、分かってくるに連れて原発のコストは上昇の一途をたどります。しかも、今、彼らが安いと言っているのは、こうした結果のコストの、止めているコストと稼働させた場合のコストの差だけを見て言っているのです。

 そして、三番目の理由として、太陽光発電は「究極の自給」だからです。紛争や戦争と不即不離の供給不安が有りません。そして、需要家により近い自給ですから、需要家の節電やデマンドレスポンスの意欲と効果を高めます。防災非常用電源にもなります。送配電の負荷も少ないです。

 そして、四番目の理由は、安全、安定だからです。原発のように放射能を出さないことは、もちろん、分散電源のため、一極集中電源の原発のように、原爆に変わる危険や脆弱性が有りません。

  電気自動車は、系統に依らないで、太陽光発電所からの直接給電を目指すことが大事です。原発電気を給電しないためと、太陽光発電とのシナジーを生かすためです。直接給電は、住宅の屋根上パネルからの自家消費が主流になりつつあります。ショッピングモールの屋外駐車場でも始まっています。住宅用太陽光と電気自動車のセット販売や完全自立型EVステーションも出ています。何しろ、系統から給電するのと直接するのとでは、料金が格段に違います直接給電により、全国の電気自動車が総じて、昼は太陽光発電量の増減に応じて給電し、夜には放電のみすることになります。つまり、全国の電気自動車が巨大な蓄電池になり、太陽光発電の変動性を調整する、否応無いが負担の無い「デマンドレスポンス」が、生来的に仕組まれます。

 太陽光発電を設置する所は、山や森林を切り拓かなくともいっぱい空いています。設置に適した場所を探す目で、街を歩いてみて下さい。農村だったら、農地の上にいっぱい有ります。使用済みパネルの処分の危険を始め、いろんな障害はあるでしょう。しかし、原発のゴミ処分等に比べれば無きに等しいです。どこまで普及できるか、少しでも多く設置するようにやってみることが今、一番大事なことです。火力発電を、調整電源として、また、原発代替のためのバランスとして伴いながら。その火力発電を、蓄電システムとデマンドレスポンスを進めることにより、可能な範囲で置き換えながら。

 原発と太陽光発電の相互排他的な関係の中で、原発が太陽光発電を貶めることにより自分が浮かび上がるということが、様々な場面で、巧妙に行われています。(上)で述べた、太陽光発電を主力電源にと、国民に賦課金を負担させながらも、需給逼迫時の予備率に殆ど生かさないで、その予備率が低いから原発が必要と言っていることもその一つです。制度開始時の冗長な固定買取価格を、埋没コストにも拘らず、資金流用していることは棚に上げ、いつまでも太陽光発電の欠点のようにあげつらうこともそうです。東西連系線の拡大をわざと遅らせ、九電や中国電力の太陽光電気を、太陽光発電への嫌がらせのように捨てていることもそうです。更に言えば、太陽光発電のコストが安いから、メリットオーダーからも最優先されなければならないところ、コストが安いから限界的電気に追いやられるという倒錯が、原発贔屓のもと巧妙に様々に行われています。太陽光発電が変動電源であることを考慮してもです。このことが再エネ賦課金を通じて行われている事象を、次の(下)で述べます。                 

    (注1)「ドローバック」とは「欠点、不利益、障害」 

    (注2)過酷事故の想定について、エネルギー基本計画の本文には記述は有りませんが、電源ミクスの原発20〜22%の根拠になる原発コストに、2000炉年に1回(50機が40年寿命運転して1回)、福島第一原事故級の事故を見込んでいます。実態でも、安全防護の第五層を当然のように、周辺自治体に避難対応を強いています。しかし、過酷事故の想定は、「限りなく原発依存度を低減する」方針の下であり、岸田GXの下では意味が違ってきます。文言として初めて、原子力基本法の第2条3項(基本方針)に、「原子力事故の想定を常に想定し」と記されようとしています。


(下)の一

 大手電力会社は、FIT太陽光電気を固定買取価格で買い取る費用と「回避可能費用」との差額の補填金を毎月、算定され交付されます。これを、「再エネ買取交付金」と呼ぶとします。「再エネ買取交付金」の原資が「再エネ賦課金」です。大手電力会社が「再エネ買取交付金」を停止中の原発の維持費に充てていることは本稿の(中)で述べました。尚、これは、再エネの調達価格となる「回避可能費用」と販売価格の「電気料金」の差額のキャッシュフローだけではありません。

「回避可能費用」の意味は、FIT再エネ電気を買い取ることにより、発電・調達を免れ回避される費用ということです。それが太陽光電気の評価にしようということです2012年に固定価格全量買取制度が始まって、「回避可能費用」は、全電源平均か火力か原発か」、「全コストか可変費だけか」、「再エネの供給力計上はどうか」、などの要素を考慮し決められました。一極中発電所において発電する、送配電前のコストです。分散して在り、地産地消の太陽光発電も、わざわざ、一旦、電気を一極集中発電所に買い取り集められてから需要家に送配電して返されるようなものです。

 2014年に一回の見直しを経て、2016年の電力全面自由化に合わせ、政府は回避可能費用を、市場価格に連動するようにしました。「市場価格連動」は、再エネ電気が無かった時、その相当分を卸市場から電気を調達しており、再エネ電気が有れば、まず、その卸市場からの調達を止める即ち回避するという考え方です。激変緩和措置というのは、2016年以前の2度の固定価格による回避可能費用を「市場連動価格」にソフトランディングするための措置です。賦課金が止まった原発の電気を補い、ましてや、止まった原発の維持費に充てられていることからして、回避可能費用は原発のコストと考えられなくもありません。 

 「回避可能費用」は低すぎるのではないかという問題が当初から有り、河野太郎氏らも問題視ししていました。2016年から市場価格連動になりましたが、2度の固定価格よりも更に下がってしまいました(注1)。この問題は、賦課金は単に電気料金との差し換えだからと、厳密に検証されない感が有りました。結果としては、2012年に制度が始まって以来2021年まで、10年間近く、ずっと7、8円ぐらいで推移して来ました。そして、上がったのか、上げたのか、卸市場価格が高騰で2021年の10月から「回避可能費用単価」は18円から30円/kwh(30分毎、1日48コマ平均)ぐらいの範囲で推移しています。

 従って、2022年の再エネ買取交付金」は大きく減ります。2018年以降の固定買取価格(2018年度:事業用18円/kwh、住宅用24円/kwh)にあっては、「回避可能費用単価」が「固定買取価格」を逆転します。この電気の買取においては「再エネ買取交付金」はマイナスにさえなり、大手電力会社は「電力広域的運営推進機関」(注2)に「再エネ買取交付金」を返納します。「再エネ買取交付金」の交付額は翌年度の賦課金の算定基礎になるので、2023年度の「再エネ賦課金単価」は大きく減りますこの高い回避可能費用が続けば、賦課金は2022年度の3.45円/kwhの「再エネ賦課金単価」をピークに、2030年(注3)を待たず、減少に転じます。

 大手電力会社は、停止中の原発を維持する原資を、だんだん貰えなくなり原発を再稼働する他なく、結局、政府と大手電力会社は、「 福島第一原発事故後、約10年の間、享受して来た低い回避可能費用を諦め手放し卸市場価格を吊り上げ、新電力を葬り顧客を奪い返す、と同時に値上げし、原発再稼働に向けて踏ん切りをつけよう 」ということです。

 尚、太陽光電気の買取りにおいて、2017年度から「送配電買取り」として送配電事業者が、間に入りますが基本、パススルーで、かつ、大手電力会社の小売と未分離、実質一体なので、上の説明では省きました。

 

     (注1)2012年と2015年に始まる2度の固定価格の回避可能費用は激変緩和措置が5年有り、2021年度から完全に市場価格連動になりました。

     (注2)「電力広域的運営推進機関」は、全国の電力需給の調整、予備率の管理に加え、2022年度からFIT費用負担調整業務も担当することになりました。

     (注3)太陽光発電の事業用20年、住宅用10年の固定価格買取期間から、制度開始から18年目の2030年が賦課金のピークと見られていました。


(下)の二

 以上のように書きましたが、この内容を、資源エネルギー庁に確かめると、回避可能費用はそうならないから、賦課金は減らないと言うのです。「回避可能費用単価」は、その電気を買取る時のコマ(30分)の卸市場価格に依り、買い取る時間帯は、余剰の太陽光電気が市場に沢山、売却されており、1日48コマ平均の「18円から30円/kwh」よりも大きく値を下げているからだと言うのです。調べて見ると、資源エネルギー庁の言う通りでした。買取りする時間帯の「回避可能費用単価」は、余剰太陽光電気が市場に捨てられることの多い九州エリアが一番安く、東京エリアも、0.1円/kwh以下(最低入札価格は0.01円/kwh)のコマが15コマ続くことさえ有ります。政府は、低い回避可能費用をまだ諦めていなかったようです。

 送配電事業者が太陽光電気を買取り、市場に売り、大手電力会社が市場から買うという「市場価格連動」ですが、大手電力会社は、その電気を市場から買っていないのかとさえ疑われます。これでは回避可能費用の決まり方は、原発の手前、決して優先されない太陽光発電の「共食い効果」に付け込む「市場価格連動」でしかありません。

 そして、これは自分達、大手電力会社だけのことなのです。新電力がFIT太陽光電気を調達する「特定卸供給」は、卸市場を経ないで、送配電事業者から直に市場価格供給を受けるので調達価格は大きく上昇しています。新電力が自前の太陽光発電所で発電した電気も、一旦、送配電事業者に固定買取価格で売り、逆鞘になっても、高い市場連動価格で送配電事業者から卸供給を受けなければなりません。新電力がFIT太陽光電気を発電・調達するのを諦めさせ、太陽光電気とその顧客を、大手電力会社が囲い込みます。

 大手電力会社は、「市場価格連動」を太陽光発電の「共食い効果」で歪めて、安い回避可能費用を享受し続け、本来、減らなくてはならない賦課金は減らず、今まで通り、多額の買取交付金を受けて原発の費用に使い続けます。

 太陽光発電は、末端の配電線を自由に開放し、その地域一帯で自家消費し、新電力に、非FIT・非FIP・非「送配電買取」でコスト通りの調達・販売をさせるべきです。送配電網は総括原価方式の電気料金を払って来た国民の資産だから出来るはずです。そして「再エネ最優先」に舵を切る時です。


 資料

「市場価格高騰を踏まえたFIT制度上の制度的対応」(資源エネ庁 2021.2.16)

   の5ページ : 「FIT電気が、消費者に届くまでの流れ」図

   の8ページ : 「回避可能費用単価の算定方法」表