2023年12月16日土曜日

「脱炭素」に原発を使ってはいけない。それには、カーボンニュートラルを遅らせることだ。福島第一原発事故の被害の惨状を、隠さず正確に世界に訴えることだ。汚染水の海洋放出を中止して、その覚悟を世界に示すことだ。

◎ 原発の安全防護第5層の「避難」を原発のコストを立てずにしていることは、おかしいことだと思います。原発があるために、放射能をどこまで我慢、甘受するかという「規制基準」にすぎない「安全基準」の「がまん」を、原発のコストを立てないでしていることを、おかしなことだと思います。

◎「ドローバック」とは、辞書には「欠点、不利益、障害」とありますが、以下に、この言葉を使います。原発があり、原発を使う上で、人間の効用ネガティブ、マイナスなこと全てです。原発のコストが高くないと言うのは、このドローバックをコストとしてカウントしていないか、コストになるのを先送りしているだけのことです、次の三つのことが有る限り。

一つは「放射能の影響が隠されたり、未解明なこと」

二つは「廃炉を含め、核のゴミ処分が未知なこと」

三つは「原発は必ず過酷事故を起こすこと」

 この三つのことに由来するドローバックは、金額で評価しきれるものでなく、金額で評価出来るものでさえ、それが近付き、あらわれ、わかってくるにつれて、コストと電気料金は上昇の一途をたどります。

◎ そして今、その上昇する前のコストの内、止めている原発を動かした場合に増加するコストだけを原発のコストのように、消費者を錯覚もしくは印象操作しつつ、「原発は安い」、「再稼働すれば、電力会社は値上げしなくてよい」、或いは「値下げ出来る」と、原発再稼働のキャンペーンをしているわけです。原発は止まっていても冷却を要すため維持費は膨大てす。

◎ 福島第一原発事故で停止した原発の膨大な維持費が、事故以来、目立たず問題にならなかった「からくり」を少し説明します。大手電力会社は、固定価格買取制度のもと、太陽光発電設置者が分散電源である太陽光発電を電力系統に繋ぐだけで、その電気を7、8円/kwhの安い回避可能費用で仕入れ25〜30円の電気料金で消費者に売ることが出来ます。電力系統へ接続する費用は、太陽光発電設置者が負担し、太陽光電気の大半は地産地消のため、せいぜい、電力系統の末端の配電網を流れ近隣の負荷で使われているからです。長距離の送電を要す太陽光電気も、送電線容量は十分に余っているからです。送配電施設は、長年、電気料金を支払ってきた国民の資産です。

 この太陽光電気の売り上げと仕入れの差額が、停止原発の膨大な維持費に充当されてきました。それは、アンシラリーコスト(需給一致をとるための周波数調整にかかる費用)を除いて10兆円ぐらいです。これは、太陽光発電の価値、ひいては賦課金です。

◎ 上に述べた文中の「コスト」を「危険」の文字に置き換えてもう一度読んでみると、危険は、ひそみ続けて計り知れません。「危険」のあらわれた「事故被害」は隠されたり、放ったらかしにされています。多くの危険が、これから子孫に、あらわれるばかりです。だから、「脱炭素」に原発を使ってはいけません。2050年カーボンニュートラルは、中国並みに10年或いは、それ以上、遅らせることです。

◎ 福島第一原発事故で、かくも未曾有の惨禍・被害があらわれ続け苦しんでいること、狭い地震国の海岸に54基もの原発を建ててしまい、過酷事故を再び起こすことに日々、怯えていることを、隠さず正直に正確に世界に向けて訴えることです。原発は、ライフサイクル全体のエネルギー収支比(産出エネルギー(電気) / 投入エネルギー)が、高効率のLNG火力並みに低い上、冷却に用いた後の温排水を海に捨てることから脱炭素電源足りえないことを世界に理解してもらうことです。汚染水の海洋放出を中止して、日本の改心の覚悟を世界に示すことです。

◎ 太陽光発電は、コストが安いこと、エネルギーの自立のため、電気自動車の電源としても、拡大が必要です。設置する場所は探し、工夫すればいっぱい有ります。

 原発を必要とする理由は、何もありません、やめなくてはいけません。




2023年9月25日月曜日

東京エリアの需給逼迫は今後ない。柏崎刈原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何も無い。

題 ; 「東京エリアの需給逼迫は今後ない。柏崎刈原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何も無い。政府は両原発の再稼働をしたいがゆえに、意図して、今夏の「東京エリア」の「電力供給予備率」を、安全予備率ぎりぎりの3%にした。」        (上)

 10月2日の朝日新聞の読者欄で、「これまで電力逼迫が原子力発電が必要な理由に使われて来た。しかし、今夏がこんな猛暑でも大丈夫なら、原子力の必要性はあるのだろうか疑問だ。本当のことを知りたい。」という神奈川県70代男性の投稿を読んだ。

 政府の行う「電力需給見通し」において、10年に1回程度の厳気象における最大電力需要の想定値を「厳気象H1需要」という。これで供給量を除し「想定の電力供給予備率」(100%を超過した部分、以下、「予備率」という)を算定する。この予備率が、需要の短期的変動(1時間以内)に備えて安全予備率3%を下回らないよう管理している。「厳気象H1需要」は夏季は「猛暑H1需要」、冬季は「厳寒H1需要」という。

 今夏の予備率は、3月に、他の9電力エリアが十分、余裕がある中で、「東京エリアのみが3.0%で安全予備率ぎりぎりなので予断を許さない」として、予備率4%を目指し(東京エリアの予備率1%は60万kw)、追加供給力を公募した。5月には、火力発電1機の応募と一部電源の補修期間の延長との相殺で3.1%だった。今夏の「猛暑H1需要」は、前年の「猛暑H1需要」に比べ179万kwhもの過去、最大の上方修正が行なわれていた。

 「東京エリア」の夏季の最大需要の過去7年の実績は、2017年 5,380 万kwh、2018年 5,653万kwh、2019年 5,543万kwh、2020年 5,604万kwh、2021年 5,665万kwh、 2022年 5,930万kwh、2023年 5,525万kwh。

 同じく、「猛暑H1需要」は、2017年 5,550万kwh、 2018年 5,637万kwh、2019年 5,671万kwh、2020年 5,653万kwh、2021年 5,660万kwh 、2022年 5,752万kwh、2023年 5,931万kwh。

 前年(2022年)の夏季の最大需要実績は5,930万kwhで、最高気温は猛暑H1想定気温を下回ったにも拘らず「猛暑H1需要」を178万kwh、前年(2021年)の実績を265万kwhと大きく上回った。この高い前年実績を1万kwhだけ乗せ、増加要因の説明も曖昧なまま、今夏の「猛暑H1需要」に用いた。そして、今夏の結果は、史上最も猛暑に拘らず、最大需要は5,525万kwhとなり、想定の「猛暑H1需要」の5,931万kwhを406万kwh、大きく下回った。2018年から2021年の4年間の5,600万kwh前後の水準に戻った。節電要請は出ていた。電力が余っている他の電力エリアからの電力融通は実施しなかった。

 次に、供給の方だが、3月の公募に応募落札した火力発電1機は、広野石油火力2号機60万kwだった。政府が隠して来た東京エリアの石油火力の1機だ。東電と中部電力の火力発電部門を統合したJERAの石油火力の全て15機、1,005万kwは、2020年4月までに長期計画停止に入り、その後、必要に応じ再稼働できるように維持管理を続けていたが、政府は全て無くなったものとして、ここ数年の需給逼迫時に際しても1機たりとも再稼働させなかった。この内、大井石油火力3機105万kwを2022年3月に、鹿島石油火力6機440万kwを2023年3月に廃止し、広野石油火力4機320万kwと、中部エリア(中部電力管内)の渥美石油火力2機、140万kwだけになっていた。カーボンニュートラルや石油の高価格があっても、需給の必要を差し置いて石油火力を排斥してよいわけがない。

 広野石油火力2号機を募集した方法は、東電パワーグリッドが実施した「KW公募」だった。「KW公募」とは、翌日、需給逼迫が見込まれる場合のみ出力供出に備えておくというものだ。結果は、後述する太陽光発電の想定供給量を、待機するだけで増加するように働いた。この公募において非落札となった電源もあった。隠していた広野石油火力2号機を突然、使ったのは、安全予備率ぎりぎりの3%を公募後も変えないために、コントロールし易いので、背に腹は代えられなかったのだろう。

 

題 :「東京エリアの需給逼迫は今後ない。柏崎刈原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何もない。政府は両原発の再稼働の邪魔になる「東京エリア」の13機有った石油火力を、一機を残し廃止した。太陽光発電は必要な時に発電し需給への貢献は大きい。 (下)

 そして、10月に、広野石油火力の残りの1号機(60万kw)と3号機(100万kw )、4号機(100万kw) を廃止した。廃止する直前に、JERAの石油火力は全て無くなったと、20226月に報道させた朝日新聞に、「今夏は石油火力でカバーしたが、今後、高経年の石油火力は問題はある。」と報道させていた。廃止した広野石油火力の3号機、4号機の経年数は、稼働した2号機(43年)より若い、それぞれ34年、28年だ。

 GX推進法を強引に通し、女川原発2号機、島根原発2号機とともに、BWR原発再稼働の最初の関門である、東京電力の柏崎刈羽原発6,7号機と東海第二原発の再稼働を何としてでもしたい政府は、東京エリアの今夏の予備率を、意図して安全予備率ぎりぎりの3%にした。予備率算定の分母は高い前年実績を当て込み、分子の供給力は隠していた広野石油火力2号機を帳尻合わせに公募した。そして、石油火力が供給力として公然となったからには、あるだけで太陽光発電の供給力 を増進することが分かったからには、両原発の再稼働の邪魔になる広野石油火力1号機と3号機、4号機、計260万kw、予備率にして4.3%を容量市場の道をも閉ざし廃止した。

「厳気象H1需要」や前年実績から実績が大きく下げたのは、前年の冬季(2023年1月)の実績5,179万kwhからだ。電気料金の値上げもあって、省エネと節電が構造的なものとして定着しつつある。10月に発表された東京エリアの「今冬の需給見通し」において、「厳寒H1需要」は、5,473万kwhで、前年(2023年1月)の「厳寒H1需要」を30万kwh上方修正し、前年実績(2023年1月)を何と294万kwhも上回る。広野石油火力2号機は稼働しない。予備率は4%以上となり、節電要請は出さないということだ。今後、需給逼迫は無い。

 需給逼迫は今後、無いことを更に裏付けるために、太陽光発電が今夏の「東京エリア」の供給に果たした役割を以下に述べる。

 太陽光発電の予備率に算入する想定の発電量(以下、「想定供給量」という)は、電力広域的運営推進機関が、確率論的に計算した「火力等の安定電源代替価値」からエリア別、月別に毎時一定の係数を定め、設備能力に乗じて算定している。「東京エリア」の係数は、年間平均は10%で7月は23%だ。7月の「想定供給量」は414万kwh(1,800万kw x 0.23)だった。

 最大需要の時、7月18日の14時は、800万kwh発電した。同日の太陽光発電ピーク時(11時)の発電量は1,500万kwh(設備容量1,800万kwの約8割)だった。「想定供給量」を、最大需要時に386万kwh、太陽光ピーク時に1,086万kwh、上回った。太陽光発電の自家消費がピーク時に200万kwh有り、これが、供給量にも需要量にもカウントされず節電になっている。太陽光発電のピーク時の発電割合は、自家消費の節電分を含めて30%((1500+200)÷ (5,525+200))だった。

 太陽光発電の「想定供給量」を超える発電量は、揚水発電の汲み上げ、火力発電の出力低下で需給対応した。公募に落札した広野石油火力2号機は、その発電能力60万kw相当の、「想定供給量」を超える発電量を、燃料ミニマムで殆ど待機するだけで供給力として生かした。東京エリアの企業が持つ2,000万kwの自家発電を太陽光発電の調整に用いる政府からの要請は無かった。

 414万kwhの「想定供給量」が天候が悪く、減少したり無くなった時の逼迫の恐れに関しては、夏は、太陽光発電の出力が曇天や雨天で伸びない場合は気温もそれほど上がらず、電力需要も伸びない。つまり、太陽光発電の出力と電力需要の間には強い正の相関があり夏季は「想定供給量」の減少による逼迫の心配はない。冬季は、太陽光発電の出力と電力需要の間には負の相関がある。しかし、冬は夏の6割ぐらいしか発電しないことと、最大需要の時は曇天や雨天であることを織り込み、冬の「想定供給量」の係数は数%しかなく想定供給量の減少は、殆ど折り込みずみだ。「今冬の需給見通し」における「想定供給量」は、僅かに1月は59万kwh(1,800万kw の3.3%)、2月は9万kwh(1,800万kw の0.5%)だ。

 原発が夜も無駄に発電するのに対し太陽光発電は、電気の必要な時に発電し需給への貢献は大きい。太陽光発電をフルに生かし抑制を減らすことが重要になる。それには、一定発電しか出来ない原発を入れないことはもちろん、蓄電池の普及とデマンドレスポンス、火力の下げ調整幅の拡大の他に、電気自動車には太陽光電気を電力系統を介さず直接、給電することが肝要になる。

 電気は十分に足りている。原子力の必要性は無い。他の9電力エリアだけでなく、東京エリアも需給逼迫は今後ない柏崎刈羽原発6,7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何も無い。















2023年9月10日日曜日

経産省が、汚染水について、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」という意味の発言をしました。


(上)                                  

 先月、7月6日、会津若松市で行われた汚染水に関する住民説明・意見交換会で、経産省が、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」という意味の発言をしました。

「陸上保管が何故出来ないか」というテーマで、質問者が次のように言いました。「場所さえ確保出来れば、長期陸上保管がベストだという思いは我々と同じですね」と。それに対し、経産省の木野参事官が「陸上保管が出来ればそれがいい。」と答えました。

 今まで、経産省は、タンク建設に3年かかるとか、浮き屋根から雨水が混入するとか些細な理由を付けて、長期陸上保管は出来ないとしてきました。それが、この回答は、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」と変わりました。

 6月に、中国から、汚染水を「安全無害というなら、何故、日本国内の湖に流さないのか」、フィジー国から「安全というなら何故、日本国内に留め置かないのか」と抗議が有りました。7月4日に出た、日本政府が頼りにしていたIAEA包括報告書では、「正当化」評価において海洋放出の全責任は日本政府に有るとされ、IAEA自らは責任回避されました。グロッシ会長が、この報告書の説明に韓国に行った時、一番怒られたことは、代替案を評価していないということでした。こうした中で、経産省は7月6日の会津若松市で行われた会で、「陸上保管が出来ればそれがいい。」という発言に追い込まれました。

 続いて、同じ質問者が長期陸上保管する場所として、福島第一原発に隣接する中間貯蔵施設が有ると言うと、木野参事官は、「双葉、大熊町の住民の心情を考えると、復興の妨げになるタンク建設は難しい。」と言いました。

 しかし、これは大きな間違いです。双葉、大熊町は、復興に希望が持てる状況ではないからです。


(下)

 双葉・大熊両町で3.11前、2万人近くいた人の帰還している人は、わずかに双葉町60人、大熊町426人です。100人のうち2、3人しか帰還していません。家、建物が有っても、夜、電気がついていないので人が住んでいないのが分かります。灯っている電気は街灯や道路灯ばかりです。帰還している人は高齢者ばかりで、この人達が亡くなった時、双葉、大熊町は無人化します。ばら撒かれた放射能を除染しても取り切れなくて、また、これからも核汚染を断ち切れない所に故郷でも人間は還らないんです。原発事故で除染して戻るという処置は福島第一原発事故が初めてでした。(注1)。それは無理だと分かりました。双葉、大熊町だけでなく、強制避難した20km内の12市町村全体でも帰還率は約2割です。失敗です。ましてや、強制避難基準の20ミリシーベルトを帰還基準に当てています、

 もう元に戻ることのない故郷の土地が、これ以上、事故被害が漁業者に、全国、世界へ広がるのを食い止め、原発をやめることにも繋がる汚染水の長期陸上保管のために使われれば、双葉・大熊町民の本望ではないでしょうか。中間貯蔵施設(注2)は4300人を追い出し国が接収して、1600人の地権者と土地を売却した人々がいます。これらの人々は、除染土用に国に接収された段階で、そこに汚染水タンクが建とうが、トリチウムが減衰する期間の100年伸びようが、大した違いでなく、むしろ、同じ理由から、また、自らの意思で行えば、汚染水タンクが巨大な墓石にも似て亡くなられた人々の鎮魂の意味も持ち、本望ではないかと思います。

 食物連鎖による生物濃縮した魚介類を人間が摂取し内部被曝し子々孫々に遺伝的障害を及ぼすから、汚染水を流してはいけません。海洋放出は、近隣諸国に喧嘩を売るようなことです。戦争に向かい安くなります。

 最後に、福島第一原発事故を小さく見せたい。廃炉の跡地を更地にし綺麗にし、事故の跡形を消したい、こうして、廃炉を難しくし、汚染水を出し続ける。汚染水を陸上タンクに長期保管しないことと福島第一原発を石棺にしないことと同じです。

(注1)スリーマイル島原発事故では、居住区域の強制避難も除染も無かった。チェルノブイリ原発事故では半径30キロ内の住民は強制退去し除染は無く今も無人のまま。

(注2)双葉町(面積5,142ha)と大熊町(面積7,871ha)の海岸部。福島第一原発を取り囲み、海岸と南北に通る国道6号の間の1,600haの土地。 福島県内の除染土と10万ベクレル以上の放射性廃棄物を持ち込み埋める。30年後(2045年)に移される県外の最終処分場の目処はついていない。      因みに、長期陸上保管に要する土地面積は70ha :   今後、1日70トンの汚染水が発生し続けるとした場合、2011年を起点に、トリチウム濃度が千分の一に減衰する期間の120年(半減期12年を10回)が、経過する間に発生する汚染水は410万トン、これを貯められる10万klタンク41基を建てられる土地面積。



2023年6月3日土曜日

女川原発2号機の運転差し止め訴訟判決は、政府や被告の範疇のことであり既に自明になっている「原発は過酷事故を起こす」ということを、今更、住民に立証責任を課す頓珍漢な判決です。GX脱炭素電源法が立証してくれているので、住民が立証する必要は有りません。


 女川原発2号機運転差し止め訴訟判決が、5月24日に却下されました。運転差し止め請求の理由は、避難計画の実効性が無いということです。仙台地裁は、原告が避難の前提となる過酷事故が起こることを立証していないという理由で、避難の実効性の有無に立ち入ることなく、差し止め請求を棄却しました。

 しかし、原発が過酷事故を起こすことは、福島第一原発事故を起こし安全神話から覚めて、自明となっています。そして、過酷事故の起こる頻度は、どのように原発を利用していくかということ、つまり、国の原子力政策に大きく従属します。「可能な限り原発依存度低減」という方針下にあっても、原発が動く限り、原子力災害対策特別措置法で過酷事故を前提として対策が講じられてきました。否、対策を強いてきました。また、エネルギー基本計画は、福島第一原発事故級の事故を2,000炉年に1回(50機が40年寿命運転して1回)、想定したもとで、2030年原発比率20〜22%か決められています。そして、この度、国の責務として原発を推進するという原子力利用の大転換の中で、政府は、原発は過酷事故を起こすことを法律に初めて明文化しました。

  仙台地裁判決から1週間後に国会可決されたGX脱炭素電源法の中で、原子力基本法に原発の基本方針の一つとして、その条文を追加しました(注)。政府は、福島第一原発のような事故を再び起こし、それでも原発を止めないで使い切っていくことを、国民に受け入れるように過酷事故があると条文に宣言したのです。原子炉等規制法と電気事業法を改定し、運転開始後40年を超えた稼働が普通になり、過酷事故の可能性は急激に増大します。


(注)原子力基本法 (基本方針)第2条第3項

 エネルギーとしての原子力利用は、国及び電気事業者が安全神話に陥り、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故を防止することができなかったことを真摯に反省した上で、原子力事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、これを行うものとする。


2023年4月12日水曜日

政府は、東京エリアの今夏の電力需給逼迫見通しにおいて、供給量からJERAの石油火力発電を隠し、さらに、需要量も不正をして、やっと、安全予備率ぎりぎりの3%をでっち上げました。

 3月30日に、政府が今夏の電力需給見通しを発表しました。7月の予備率は、猛暑のケースで、北海道と東北エリアが8.7%、中部、北陸から、九州エリアが11.7%、沖縄エリアが22.3%の中で、東京エリアのみが、安全予備率の3%ぎりぎりで、厳しい、これから、火力発電を公募すると言っています。しかし、JERAの石油火力発電が応募することは有りません。

 政府は、東電と中部電力の火力発電部門を統合したJERAの、石油火力発電を隠して来ました。2020年4月までに、JERAの石油火力発電所の全て15機1,005万kwを長期計画停止しました。維持管理を続けており動かせるのに、政府は、今まで一機たりとも再稼働せず、ここ数年の電力需給逼迫を演出して来ました。朝日新聞とNHKにも、これらは無くなったと報道させて来ました。カーボンニュートラルだと言っても、石油が高いからといっても、需給上の必要を差し置いて良いものではありません。それに、需給逼迫を避ける火力運転の燃料消費は少ないです。

 長期計画停止した15機1005万kwの内、大井石油火力3機105万kwを2022年3月末に、鹿島石油火力6機440万kwを今夏の需給逼迫見通し発表の翌日、2023年3月末に廃止しました従って、広野石油火力4機など計6機460万kwを、今夏も隠しています。これは予備率にして、東京エリアは火力発電1機相当の60万kwが1%ですから、7.6%になります。

 もう一つ、政府が予備率見通しを作為的に低くしていることが有ります。

 東京エリアの2022年度の冬季、今年1月は、5月時点の予備率見通しマイナス0.6%が出た後、火力発電が公募され積み上げられ、9月時点で4.1%まで改善し、当月は、節電要請は出されており、見通しの前提と同じ厳寒になって、需給逼迫は回避されました。回避された要因は、供給力を積み上げたことだけではありません。それ以上に、需要が大幅に減少したことでした。厳寒となったものの、前年に比べ需要が、1月は5.3%、2月は8.7%も減りました。この減少には構造的に継続する、継続出来るものが多くあると思います。しかし、今夏の見通しの最大需要量は、この減少を少しも反映せず前年同期の0.4%ほど高めに設定しています。東京エリアの予備率の分子の供給量からはJERAの石油火力を隠し、分母の需要量も不正に過大にして、やっと、安全予備率ぎりぎりの3%を算出したわけです。

 今夏の電力逼迫見通しが発表された同じ日に、日本原子力文化財団が、原子力に関する2022年9月から10月に行った世論調査結果を公表しました。「原子力は必要」というイメージを持つ人が、東日本大震災以降、初めて30%を超えた。その背景には「電力需給逼迫」と「エネルギー価格上昇」が影響しているとしています。

 政府は、「電力は十分に足りている、この先もずーと」という事実が、国民の意識の中に定着することを、今、一番恐れています。恐れながら、原発必要の機運醸成のための偽の世論形成、則ち、国民と諸外国に対し、政府は自分達が原発をやりたいことを、国民の意志の信託だと言いたいのです。

 尚、日本原子力文化財団は、同調査で汚染水についても聞いており、「漁業者の理解を得られるまでは、海洋放出を行うべきでない」という国民の意識が浮き彫りになりました。

海洋放出することについて、「国民の理解を得られていない」は51.9%、「漁業を中心とした関係者の理解を得られれるまでは行うべきでない」は42.3%を占め、「国民の理解は得られている」(6.5%)、「関係者の理解を得られなくとも行うべき」(5.6%)を大きく上回りました。


JERAの石油火力発電所の15機1,005万kw

広野石油火力  福島県双葉郡広野町

 1号機(60万kw 重油・原油 1980.4

 2号機(60万kw 重油・原油 1980.7)

 3号機(100万kw 重油・原油 1989.6)    

 4号機(100万kw 重油・原油 1995.1)

鹿島石油石油  茨城県神栖市 (2023年3月廃止) 

  1号機( 60万kw 重油・原油 1971.3) 

  2号機( 60万kw 重油・原油 1971.9)

  3号機( 60万kw 重油・原油 1972.2)

     4号機( 60万kw 重油・原油 1992.4)

    5号機(100万kw 重油・原油 1974.9)  

    6号機(100万kw 重油・原油 1975.6)      


大井石油火力  東京都品川区八潮  (2022年3月廃止)

   1号機(35万kw 原油 1971.8)

    2号機(35万kw 原油 1972.2)

   3号機(35万kw  原油 1973.12)

渥美石油火力  愛知県田原市 

   3号機(70万kw 原重油 1981.5)

 号機(70万kw 原重油 1981.6)

    計  15機  1,005万kw