2014年12月9日火曜日

住宅用太陽光は究極のエネルギー自給である

住宅用太陽光の本領は究極の自給である。末端の需要家の手元にあり、「一度屋根にとりつけ、払えば終わりコモディティー品」ということから自給が初っ端に確定するのである。その後、自分さえ何も手をかけなくてよい自給である。再生エネの文字通り無限の原燃料が、勝手に発電してくれる自給である。究極の自給は送電を必要としないし、系統の安定性を乱すこともない。いざとなれば、その場で隣近所で使うことも出来、或いは、蓄電池でピークシフト、不安定性の問題は解決できる。蓄電池価格も、既にシステム価格の十分の一で開発されている。太陽光の自給の質の高さは比類なく、エネルギー調達からの100%解放と言っていいのである。原発電気に頼ろうとしたり、わざわざ固定価格買取制度(FIT)で普及を誘引しようとするのは、我々が、このエネルギー源として何者にも代え難い、自給の絶妙さの価値を見届けていないという誤謬からなのである。しかも、願ったりかな、太陽光発電のコストは高くはなく安いのである。最終消費エネルギーの14%を占める家庭用エネルギーを住宅用太陽光で賄い切るということを、何はさておき優先課題とし、四の五の言わず、やる時なのである。家庭の外で使うエネルギーではない。福島後は最悪の事態を想定して、エネルギーミックスに大胆で先進的アイデアを提示する他ないのである。
さらには住宅用太陽光電気を電気自動車に充電することで、ピークシフトに役立たせながら、家庭用自動車エネルギー8%も究極の自給が可能であり、民生用の業務用エネルギー19%の一部も住宅以外の建造物への太陽光設置により、究極の自給が可能なのである。
究極の自給は購入電気を減らす点で省エネと効果が全く同じ、エネルギー調達から100%解放である。調達と結果として同じ効果に加え、調達から使用までに絡む全ての問題が無くなる。価値は2倍といってもよい。



2009年11月に住宅用太陽光発電を対象に「余剰電力買取制度」を導入した目的は「低炭素化社会の実現を国民全員参加で行う」というものである。2012年7月から再生エネルギーの導入拡大を目的にした本格的な「全量買取制度(再エネ特措法)」が導入され、これに制度として吸収された。原資は前者は太陽光促進賦課金だったが2014年10月から後者の再生エネ促進賦課金に一本化され、いずれも個人需要家が負担する。
新制度に吸収されても太陽光については低炭素化社会の実現を国民全員参加で行うことは生きている。制度の移行がスムーズに運んだ背景には2011年3月の福島事故をはさみ、原発の負荷を少しでも緩められるなら太陽光で自給して賦課金負担もしよう、再生エネルギーがどこまで原発代替できるかやってみようとする国民の了解があった。単に再生可能エネルギーの拡大がなればよいというものでなく、原発に頼らない「低炭素化」であり、「国民全員参加」は太陽光に関しては、賦課金負担者の国民が買取価格の優遇を受ける発電者になれる限りはなろうというものだった。余剰電力買取制度の3年弱の間、個人、即ち住宅用の普及は道半ばで、全量買取で経済性を敏感に察知した事業体や外国資本による産業用設置が急増し送電網容量不足から連係保留措置もとられるようになった。住宅用の普及はまだまだ途上である。送電網が産業用に占められて、住宅用の今後の普及にまで支障をきたすようなことがあってはならない。電力会社は送電網容量と出力安定化の電源の拡充で受入拒否と抑制を回避してほしい。同時に政府や電力会社からの、個人に産業用に負けず設置するよう働きかけが、なされねばならない。住宅用は固定買取価格の受益者と負担者の一致も叶い、自給を含む余剰売電で送電網への影響が小さく、更に安全保障上の決定的優位で、国民経済的に最も優れているからだ。住宅用が普及し切らない理由は、個人が発電量、耐用年数、設置工事の確かさ等に関する不安が、買取価格を提示されるだけでは拭えないからである。個人が誘引されるには安心感が不可欠である。買取価格は少し殺伐として、補助金の方が政府が出すということで安心感を与える。産業用より情報の非対称性の影響が大きく不安にかられ足踏みすることが多い。メーカーの出力保証は公称能力からの乖離を補うもので売電収入と直結した発電量の保証ではない。原発の稼働もさせたい政府と電力会社は、福島事故後も今に至るまで固定価格買取制度の仕組みだけ与えて住宅用の普及に及び腰が続いている。まだ遅くはない。政府が住宅用の国民経済的優位性を国民に知らしめ本腰を入れて後押しすべきである。政府がメーカー、業者の保証の上に発電量、耐用年数、工事の質を保証するのだ。この保証は、個人の杞憂を取り払い買取価格の保証と並ぶくらいの効果があろう。しかも太陽光発電の寿命の考察で述べた通り太陽光モジュールの現在の品質の高さによって政府のお墨付きの付与と工事業者の統制だけで殆ど済むだろうから、軽微な財政負担で済む。


メガソーラーのような産業用の普及ならばFITのような回りくどいことをしなくとも国が税金でやれば済むが、個人住宅用は国でなく持ち主に購入し屋根に付けてもらわなくてはいけないので補助金やFITで誘うしかない。補助金のように費用の片側だけよりFITの収入費用両面の相乗的誘引が強力である。さらに住宅用の自家消費もする余剰売電を増やそうと自家消費を減らす努力を誘引し、省エネの一石二鳥もある。FITの達成しようとする再生可能エネルギー普及の本来の目的の一つのエネルギー自給率の向上という点で個人住宅用は究極の自給である。派生的にはエネルギー備蓄の機能も絶妙である。住宅用が飽和すれば最終エネルギー消費の14%を占める家庭用エネルギーの殆どが半永久的に備蓄されたも同じである。
国がすれば誘引費用も無く済む事を、国民個人がわざわざ誘引費用を負担し、その個人が負担の目的の売電に関わらなければ、何の理由もなく個人から売電事業者に負担金が移転しているだけである。2015年2月現在、政府はエネルギー種別のコストを見直しているが、その中で太陽光のコスト単価は賦課金を含めたコスト単価にする方向である。賦課金を、無意味に使う上、原発よりはるかに高いエネルギーと悪者にするために利用する。原発が止められるという願いで賦課金を負担し続ける国民に恩を仇で返すような仕打ちが平気で行われる。20年間続くので巨額である。ドイツも、以上述べた点を見落としたから失敗した。ドイツの約2割が野立てで残り8割が屋根設置型だが、この内、大半が商業施設、集合住宅、工場等の非住宅用であった。住宅用太陽光は個人の屋根につけてもらうから国が直接できないからFITに依る他ない。更に住宅用は後述するが屋根に付けてもらうには情報の非対称性があるし採算で済まないいろんな要素があるのでコスト単価が安いという理由は直ちにFIT不要論に繋がらず、FITが有効になる。但し、コスト補填を旨とするFITの適用自体がコスト安を否定するので、本当のコストの周知の方も重要になる。

FITは太陽光発電の住宅用に最も適した制度である。量産効果を狙う上でも同じ再生エネルギーの風力、地熱よりよい。買取マークアップを、原資を負担する人と同じ個人需要家が享受できる。負担者は、普及という最終便益だけを得ればよいのではない。設備設置者となって、その過程の固定価格マークアップという便益も同時に得て初めて制度が本領を発揮する。FITが仕組んでいる誘引は買取価格マークアップ自体の誘引だけでなく、制度の原資を負担する者が回収して当然とする権利意識からくる誘引がある。賦課金を負担するからにはそれを原資に制度に仕組まれている誘引に的確に乗って買取価格マークアップを享受したいという誘引である。端的には、負担が負担した所へ戻ってきて初めて賦課金の払いに疑問も湧かず普及もなるのである。FITにおいて個人住宅用は抜き差しならないのである。固定価格買取制度は、設置される太陽光発電所も賦課金負担も売電による買取価格の享受も、三つともに「分散型」である制度なのだ。

普及は畢竟は国民の厚生、効用につながるが、普及が目的だけでは賦課金を最終需要家に負担させる根拠と意義として弱い。企業や外国資本に劣らず最終需要家に固定買取価格の受益者、即ち分散型エネルギーの発電者になるインセンティブを確実に与えてこそ優れた制度設計と言える。平成26年度から国の補助金が撤廃され、このことが益々重要になった。住宅用の買取期間が10年のままで産業用の20年に取り残されていることは賦課金負担者が誰かを忘れた本末転倒の政策といえよう。住宅用は送電網の影響が軽微である。利益を目的とした産業用と一律に住宅用まで抑制の対象にしてはいけない。最小限の住宅用買取価格の改訂、政策投資銀行の1%台低利の住宅用融資、耐震補強と屋根設置工事との融合、様々な屋根に設置できるよう取付け技術、移転技術の向上等も国が本腰を入れて検討すべきである。

また、住宅用は国内メーカーのモジュールが使われる。固定価格買取制度が無意味になった影響は二つある。一つは個人がする主に住宅用の普及を阻害し負担者と売電者の乖離を招いた。二つは国内メーカーを毀損した。制度の誘引アルゴリズムによりコスト競争力を付ける猶予を与えることなく海外メーカーに日本市場を一気に蹂躙させ国内太陽光産業の競争力強化に繋がらないどころか痛めた。パナソニック、シャープは、個人が住宅用に日本メーカーのものをほぼ9割に上るほど採用したから、社内太陽光部門はQセルズのように直になっていない。2014年第一四半期世界一の出荷量だったシャープは輸入インゴットのコストに苦しみ太陽電池部門は2014年度決算で60億程の赤字となり自社生産販売から撤退を検討している。会社は台湾企業の出資を仰ごうとしている。産業用は国策に転換し、住宅用に舵を切り直そう。

住宅用に舵をきり戻すそのやり方は、次に具体的に述べるが、要は太陽光の稼働
年数は35年ということを国民に分からせるだけでいい。
・国が、賦課金を負担する個人の住宅用に普及させるという意思と態度を明確に表明する。
・個人のソーラーローン金利は2.3%程度だが、住宅並に1%台の融資を受け
 られる道を開く。住宅資産に劣らない確定年金フローの担保効果をもっと評価
 すべき。
・未だに、個人は経済性以前に、安全性、耐久性に不安を持つ。
 太陽光発電がコスト高だから賦課金が必要だという政府や電力業界の国民への
 擦り込みが邪魔をしている。3kwをたったの百万円強で屋根に乗せられるのに
 コスト高と言われたおりには、耐用年数がさぞや短いのだろうと勘ぐるのが、企業
 と違い情報の非対称性の大きい国民である。発電量と稼働年数について、今のメーカー
 や業者の保証の他に、長期の政府保証を付ける。産業用で主に使われる海外
 モジュールが25年の出力保証に対し、住宅用に使われる国内メーカーの
 モジュールは出力低下幅の大きいせいぜい20年のものも多い。
・個人住宅(10kw未満)も買取期間を10年から20年に変更する。出来ない
 なら、11年目からの買取価格を予見できるように告知する。自由化後、旧電力
 会社以外にも売電できるメガソーラーよりも買取期間の10年終了後独自で売電
 の手立ての無い住宅用こそ買取期間20年であるべきだ。
・持ち家率の高い層である高齢者の住居に融資出来るようにする。パネル等の移設
 取外し設置技術を政府支援で養成する。時代はスクラップアンドビルドから
 メインティナンス、即ち戸建て新設から中古住宅長期活用の時代に移りつつ
 ある。住宅の建て替えが太陽光の寿命の前に来る心配には、前の家は傷付けて
 もよいので取外しは簡単であることを知らせてあげる。
・中古住宅に幅広く、屋根の強化、地震対策の点で支援し、太陽光パネルを付け
 易くする。
・工事業者や販売業者の質の向上を政府がもっと監視統制する。悪質業者は減った
 が、技術知識の未熟な業者が増えている。自分の家に自ら頼んで設置しようとする
 人はまだ少ない。だから訪問販売に高値で買わされ、本当の安さが伝わらない。
・補助金を復活させる。
・賦課金の行き先を企業や外国資本よりも、家庭に還流していることが実感できる
 まで、住宅用買取価格を高く保ち、賦課金の行き先と金額について政府が把握し
 国民に広報する。
・住宅用余剰売電の節電インセンティブの効果実績について、政府が確認し、国民
 に広報する。
・住宅用太陽光発電の分散型電源による究極の自給の備えが、系統連携の負荷が少
 ないこと、また安全保障上の多岐にわたり優位なことを広報する・
・住宅用太陽光による自給のエネルギー備蓄効果を、国家石油備蓄量を減少する
 ことにより量的、具体的に行動で示す。
・安全保障の一つである国家石油備蓄を政府の意思が反映できるよう運営を国策に
 戻し、合わせてスペースに太陽光を国策で導入し、石油備蓄量を振り替える。
・住宅用太陽光売電収入の非課税所得措置を設ける。単に昼と夜の電気の交換で
   あり、固定価格による等価交換超過分は賦課金負担という隠れた経費がある。

以上述べた太陽光の良さは、住宅用を前提としており、稼働期間を求める計算に土地代、フェンス設置費用は無い。逆にパネルの値段を海外メーカーより高い国内メーカーのものをとっている。屋根スペースに制限が有る中、収まり易いということで単結晶主体でコンパクトな国内メーカーが択ばれることが多いからだ。
太陽光発電は下記に列挙した特徴で住宅用が醍醐味なのである。
  1. 前述したように、安全保障の究極の自給に適う。
  2. 次章で取り上げる余剰売電と固定価格買取制(*1)が、余剰を少しでも増やして供給に回そうと自家消費の節約インセンティブになる。つまり創エネと省エネを叶える。
  3. 自給は三分の一以上に達し、その分送電網のお世話にならない。また分散しているため電力会社の送電網への影響が軽微である。
  4. パネルを置く土地を必要としないので自然環境を壊さない。
  5. 太陽により近い屋根ということは影が入りにくく、光源を無駄にしない。
  6. 日本屋根は4寸勾配(22度傾斜)が多く、最も発電効率の高い太陽に対する角度90度即ち30度傾斜に近い。
  7. 用地代が不要な上、住宅に断熱効果を与える。
  8. フェンスが不要で、侵入や危害を受ける心配がない。
  9. 土埃を被らないので、パネル表面の洗浄は降雨で済む。
  10. 自立運転に切り替えれば、いつでも系統連携しない独立電源として用をなす。
  11. 家庭用運送エネルギー即ち電気自家用車の動力源として補給の便利さと燃費経済性で優位。
  12. 固定買取価格を、そのマークアップ原資の再エネ賦課金を負担する需要家が享受できる。
  13. 仮に政府が言うように原発を止めて電気代が上がるなら、自家消費分約4割は影響を受けない。
これらの特徴をみると、採光と採電の違いはあっても住宅の窓とよく似ていることに気付く。住居の窓が太陽光から室内に明かりを取り込むように、屋根に風雨を避ける機能に加えて、生きるための電気を取り込む機能が加わる。また断熱が空調効果となり窓と同様に快適さを与える。省エネはエネルギーの制約からの完全脱却である。住宅用太陽光は単に再エネでなく、購入電気を採光の窓のように減らす省エネと捉えることもでき、その価値は別の意味を持ってくる。日本の農家が宗旨に関わらず一様に天照皇大神のお軸を掲げて太陽の恵みに感謝したように日本の家庭は、燦々と太陽光が注いだらああ勿体ない太陽光パネルを屋根に祀ろうと思うのである。農耕を糧とする倭民族に合っている。野立てのモジュールをモップで洗浄するのは、田畑を耕すのと同じ意味を持ってくる。見栄えを気にする人達言いたい。原発の作る電気を使って生活するよりも恥ずかしくない。むしろ慎ましく自給する住人の心が家に現れて美しい。
吉本隆明は3.11のほぼ一年後、人類の未来のために科学技術に挑戦し続けるべき、可能性を信じて科学の粋である原発を放棄すべきでないと言い残して亡くなった。核を持てないひがみのようなものがあるのだろうか。科学を尊重してやまない若者達には、君達が夢見ている科学の粋の人工知能は完成した暁には原発は止めようと言うのだよと言いたい。行け行けどんどんの大人に言いたい。霊長類などと言わないで自然の前に自らを疑うことさえできれば原発をやめるなんて簡単だよと。科学の使い方が大事なのであって実用では自然に対し毒になる科学を見分け、ここらへんで止めとくかと自制することも科学である。化学でも毒物を生ずる反応は避ける。原発がCO2の比ではない毒物を生んでもなお、やってきたのは電気を生むからだ。その電気が他のクリーンな方法で足りるなら、さすがに毒物の生成は避けるだろう。原子核を分裂させ生じる熱エネルギーを動力に変える蒸気機関に依らなくても、原子核の周りの電子が光に当たれば動きだすことから直接電気を取り出せる。後者の方が自然の摂理に沿って人間と調和する高次の科学である(*2)。人間の衣・食・住の住の意味を大きく変える科学は原発などより、人類にとって余程大切である。
自給即ち発電者が即需要者であることの有難さ、尊さは計り知れない。発電で自家消費された余剰の電気は電線に流れる前に、まず引込み柱に繋がっている近隣の七、八軒くらいの家庭に供給消費され、さらに東北大震災で活躍した電気自動車にも供給できる。停電時、1.5kw以上発電中であれば1,500wの家電機器の自立運転に耐える。いざとなれば独立電源として、オール電化で昼に煮炊きし家電は蓄電機能付き、車は電気自動車といった具合に一家庭の生活の電気を賄え、昭和30年代の生活を思ったら不自由を感じても何とか凌ぐこともできる。原発を容れるため避難訓練している大変さに比べてみるといい。人間が今の生活を所与として見るから、物の大変さの軽重がわからなくなり本末転倒になる。送電網や出力調整問題を最初から克服しようともせず、あげつらう。これも原発の陥穽である。それに蓄電池の技術進歩を待てば全ての問題が解消する。原発使用技術と蓄電池性能の向上、どちらが容易かの視点を見落とすと本末転倒になる。
太陽光モジュールが屋根の上に乗せたもう一枚の屋根になり断熱材の役割も発揮し、空調設備のエネルギーを使わない空調が行える。設置下の室温を、夏は日中の直射日光を遮り4度下げ、冬は朝晩に屋根からの放射冷却を抑制し2度上げる。エアコンの設定温度1度変化で10%の節電になることを考えればこの断熱効果は大きい。

(株)ポラス暮らしの科学研究所調べ
季節
屋根表面温度
(屋根材はカラーベスト)
野地板表面温度
設置前
野地板表面温度
設置後
野地板表面温度差

設置下の室内温度差
(筆者予想)
夏場
70℃
49.3℃
38.4℃
10.9℃
  —4
冬場
 5℃
 8.1℃
13.3℃
 5.2℃
  2℃
     (注)設置下の室内温度差は切り妻の東西両面に設置した筆者が推定した。

家庭用エネルギー(自家用車燃料除く)は最終エネルギー消費の14%を占める。現在の戸建て住宅の平均導入量は一戸当たり4kwである。日本の戸建て3,000万戸(全世帯数5,000万の内、持ち家は3,000万戸から推定)が仮に全てオール電化で家庭用エネルギーを自給できる規模である4kwの太陽光発電を屋根に設置すると8.4%(14% x ( 3,000 / 5,000 ) )のエネルギーを賄える。現在、どんな屋根にもパネルを設置できる訳ではない。もちろん日照もあるし、接合個所からの雨漏りの懸念、屋根の強度とパネルの重量などが問題となり、メーカーの設置基準で可否判定が行われている。今後、屋根強化や地震対策、二重屋根による空調等の概念と結びつけた設置方法により出来るだけ多くの屋根に設置可能となることが課題である。そのためにも、国内メーカーに固定価格買取制度をピンポイントに及ばせ、その分野の研究開発の余力を付与しなければならない。更に残り2,000万戸の集合住宅の陸屋根に設置すれば建坪は平均4階建てで1/4に減るが1.4%(14%x(5,000−3,000// 5,000)を賄え合わせて約10%となり、この20年間の原子力の発電比率10%に達し、原子力に代替しうる。ことほどさように各家庭が屋根にパネルをつける影響は大きい。屋根が切り妻でも寄せ棟でも北西または北東までは十分発電し一戸当たり4kwの出力は十分確保できる。さらに将来モジュールの小型化、軽量化が進めば日照を受け邪魔にならない限り、倉庫、車庫、デッキの屋根、庭の一部等への設置が普通になり、平均出力4kwの拡大余地は十分ある。そのころはモジュール価格も低下し、電気料金は上がり増設のメリットは一層増す。((*3) 住宅用累積設置戸数、エネルギー基本計画)
  (*1)国民がやる太陽光発電コストは不利であり、それを補い埋め合わせる
         ため国民が賦課金を負担しているというのは間違いである。まず太陽
         光発電コストは電気代より安くて有利である。次に、この制度は電気
         事業者に一定の再エネ電気の利用を義務付ける20034月施行の
         RPS法が始まりで、再エネの買取義務以前に電力会社の使用義務を
         発端にしたものである。この点は総括原価主義だからどちらでも同じ
         というわけでなく、誘引費用を負担するかしないかで重要である。
         住宅用太陽光発電の固定価格による買取制度が2009年11月に
   始まり2011年4月から電力会社の太陽光発電促進賦課金の電気
         個人需要家からの徴収が始まった。20127月に産業用20年買取の
       「再生可能エネルギー特別措置法」に吸収される。再生可能エネルギー
         電気の電力会社の割当義務量を満たすのが当初の動機で、その割当分を
         外部に頼む買取制度における発電誘引費用を総括原価主義の枠内で行って
         国民に付け替えている。総括原価主義と言いながら住宅用太陽光以外の
         費用負担していない企業や外国資本まで参入しているFITにおける誘引
         費用の賦課金の負担者の正当性は今一度検証されねばならない。
*2)金属等さまざまな物質に光(光子)をあてれば電子が飛び出す現象である
   光起電力効果は1839年にアレクサンドル・ベクレルによって発見された。
   1905年にアインシュタインが提唱した「光量子仮説」によりその原理が
   説明された。シリコンのような半導体を使うことで光起電力効果を物質の
   内部で起こし(内部光電効果)、浮き上がってきた電子をセル表面に張り
   巡らせた細い電極で拾い上げると電流(電子の流れ)として取り出せる。
   米国ベル研究所の3人の研究員フラー、ピアソン、シャビンが、実用的
   性能(6%の変換効率)を持つシリコン結晶太陽電池を開発した。
  (電池は呼称に過ぎず蓄電機能は無い。正確には光電気エネルギー変換器
   である。)
 (*3)住宅用累積設置戸数とエネルギー基本計画
モジュール国内出荷量 太陽光発電協会   (単位:万kw)  2013.6まで発電開始分

買取制度開始
まで
(9ヶ月間)
(3ヶ月間)
(9ヶ月間)
(3ヶ月間)
(3ヶ月間)
累積合計

2012(H24).6
まで
2012.7~2013.3
2013(H25).4
6
2013.7
2014(H26).3
2014.4
2014.6
2014.7
2014.9

住宅用
470
    97
    57
      180
      49
      53
906
非住宅用
  90
    70
  108
      509
    139
    186
1102
合計

560

  167
  166
      696
     201
    257
2047
 ()簡便に世帯数(戸数)に換算すると、780kw ÷ 3.5kw=223万世帯()
    ()エネルギー基本計画での位置付け
 再生可能エネルギーを2030年に全ての発電量のおよそ2割以上へ増やす。
 現在の再生可能エネルギー10%(水力8.4%含む)の内、新エネルギーは1.6%
 太陽光発電の割合を、住宅用、非住宅用を世帯換算し民生用エネルギー割合から
 検証すると、
    (800+900) x 4.0kw=400万世帯  14% x (400/5,000)=1.1%
    水力の増設余地は少ないことから2030年の増分10%は新エネルギーが担い、
  現在の1.6%11.6%に上げることになる。風力、地熱等のエネルギーの促進も
    目ざすが、太陽光エネルギーの一層の促進、特に家庭の屋根への普及が望まれる。


住宅用の良さを先に述べたが、それに加え太陽光発電共通の良さとして付け加えるものを整理する。
空気と同様自由財であり無限にどこでも降り注いでいる。捨てられていたエネルギーを捉える。これが再生可能エネルギーの根本であり、中でも一番捉え易い、個人でどこでも捉えられるエネルギーが太陽光である。無駄に捨てられているものを捉えるということは、人間の作った相対的、短期的尺度である経済性を超えて価値を有する人間の営みである。発電セル素材のシリコンも無限で、枯渇しない。これに加えて太陽光発電は熱エネルギーや運動エネルギーを経由しない発電の方法という、他の再生可能エネルギーには無い長所がある。設備は人間が運転稼働させる必要がなく、振動や磨耗も起こらないのでメインティナンスも簡単でランニングコストが従来のエネルギーに比べたら殆ど無いといっていい。降雨という自然現象が洗浄するので、発電と維持の両方が自然づくしである。環境に何も離反しないどころか、環境そのものが発電の主人公なのである。さらに、日照中しか発電しない欠点も見方を変えれば需要ピークの昼間に発電する長所とも言える。発電変換効率、蓄電池の性能等、再生エネルギーは伝統的エネルギーと違い性能や技術で進歩途上である。サプライチェーンが無い。
稼働年数35年がリスク有ると見る人がいれば、その頃の更新はコモディティー品の架台の上のパネルを値が下がった所で取り替えるだけでいいのである。
まとめると
(1) 枯渇がない
(2) 原燃料が只
(3)  原燃料の仕入れが不要
(4) メインティナンスは主に自然が行う。
(5)  環境への悪影響が皆無
(6)   出力変動エネルギーの欠点を蓄電池の技術・性能の進歩で補う可能性。
(7) (2),(3),(4)により投資が殆ど初期投資の一回きりである
(3)以下の特徴はコスト単価(円/kwh)では現れない所だけにもっと評価されなけれ
 ばならない。
端的には、再生可能エネルギーは文字通り、原燃料は無尽蔵でコスト単価には発電設備だけ。コスト単価比較など以ての外、エネルギーの多様化など言う必要もない、増やせるなら他のエネルギーを排除しても、増やさなければならない。













                  


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