2024年11月28日木曜日

「ウラン濃縮を自由に行う権利を放棄出来ないから、核燃サイクルをやめられず、原発もやめられない。」と、元資源エネルギー庁長官が発言しました。

 エネルギー基本計画の改訂に向けた議論が大詰めを迎えて、 朝日新聞が、第5次エネルギー基本計画(2018年)策定の時の資源エネルギー庁長官にインタビューしたものです。11月28日の朝刊です。

 元資源エネルギー庁長官は、「原発をやめることは核燃サイクル、再処理をやめること」と言い、これはその通りでしょうが、さらに、「日米原子力協定で、日本はウラン濃縮を自主的に行う特別な権利を、再処理をすることを条件として得ている。」と言い、だから、「原発をやめることは、そのウラン濃縮を行う権利を放棄することになる。」と言っています。「ウラン濃縮の権利を放棄することは、日米同盟をどうするのかという議論にもなる。」と言っています。また、「再処理施設があり、使用済み核燃料の中間貯蔵施設を置いた青森県にも説明が出来ない」と言っています。

 以上を「本質的な議論」と、元資源エネルギー庁長官は言い、「東京電力福島第一原発事故後、こうした本質的議論を尽くした上で、民主党の原発を限りなくゼロにしたいと言う方針を目標にとどめた」と言います。そして、「その後、第4次エネルギー基本計画(2014年)に盛り込まれ維持されている「原発依存度を可能な限り低減」という文言の「見直し」は、常に考え続けるべき論点であり、議論すべき時期を見極めることが大事だ」と言います。 締めくくりは、今、審議している第7次エネルギー基本計画において、三つのことが、焦点になるだろうと挙げています。一つは、 脱炭素シナリオとその電源の確保、二つは電力需要増加への対応、三つには、エネルギー自給です。

 元長官の発言は、第7次エネルギー基本計画が基本政策分科会で審議されている内容と、全くかけ離れています。元資源エネルギー庁長官とは言え、第5次エネルギー基本計画の策定を担当した責任者が、「S+3E」(注1)以外のことによって、今、審議中のエネルギー基本計画の方向を決する最重要な文言の見直しをサポート(注2)しています。基本政策分科会における「S+3E」を原則とした議論が、嘘だと言っているも同然です。

 折しも、柏崎狩羽原発7号機は,、仮に再稼働しても、特重施設の完成が間に合わず10月には4年間の長期停止に入ります。そして、7号機の代わりに、6号機を再稼働し、これも、特重施設の無いまま、4年間、運転しようとしています。特重施設の規制は米国のB5b(注3)の規制を日本に適用したものです。日本においては、大型航空機衝突やテロ以上に、原発がミサイル攻撃を受ける危険の方が、大きいです。この原発の根源的な危険は、ウクライナ紛争でも明らかになりました。さらに、元資源エネ庁長官の言っているようなことであれば、日本の原発がミサイル攻撃を受ける危険は増大するばかりです。

 資源エネルギー庁は、原発の再稼働に躍起で、太陽光発電の普及は上の空なばかりか、太陽光発電を貶めることにより原発を浮上させることをやっています。以下に説明します。 

 優先順位を原発の下位に置いて、燃料はいらず放っておいて発電するほど安い太陽光電気を抑制し捨てています。原発の夜に余る電気を低料金で売り、昼の需要を夜にシフトする需要調整をしています。

 地産地消の太陽光発電の電気を、回避可能費用と言って卸市場価格で買い取り、託送コストを乗せて販売しています。その分、増える賦課金を、太陽光発電のコストのように言いながら、停止中の原発維持費に流用しています。

 FITは、太陽光発電のコストがいくら下がっても、発電者の投資意欲を増すことはありません。売上もコストベースの固定買取価格だからです。回避可能費用が固定買取価格を逆転する場合は、取り過ぎた賦課金が電気消費者に還されます。FIPは、固定買取価格を、通常それより安い卸市場価格に変えるだけです。このため、太陽光発電の普及が、今、止まりつつあります。  

 地産地消の太陽光電気を、そのまま地消することが肝です。安さが、そのまま生かされます。昼の日照時の需要が自動的に増えます。近時、地産地消通り消費すれば、10円/kwh以下で消費出来ます。自家消費やPPA、を増やしていきます。中でも、電気自動車へ太陽光発電所から直接給電すれば、燃費(電費)はガソリン車の8分の1ですし、バッテリーが蓄電池になり、自動的に、抑制されている太陽光電気を給電します。

抑制があるから、太陽光発電をもう増やせないとうことではありません。抑制する時間帯は一時で、そのほかの時間帯の発電が大きいからです。

 資本費が殆どの太陽光発電の、耐用年数を適当に短く見積もるなどして、賦課金の国民負担はお構いなくコスト高を演出してきました。

 技術力、生産量ともに世界トップだった国内メーカーを守らず、太陽光発電パネルの国産化に失敗しました。FITの量産効果が及んだのは中国パネルでした。環境を破壊するメガソーラーの設置場所の統制を欠いてきました。中国資本の太陽光発電設備が増えるに任せています。

 CO2温暖化説は定かなものではありません。仮に、そうだとしても、原発の環境破壊の方がはるかに甚大で取り返しのつかない問題です。

 元長官が締めくくりに挙げた三つの焦点には、「S+3E」のうち、安全性(S)と経済効率性(E)の観点が有りません。安全性の「S」は他の「E」とは別格の大前提です。ましてや、福島第一原発事故の現状を見て、安全でない原発は自然を毀損し滅失し続けるという点で、「S」は、一つの 「E」の「環境適合」を包含します。2050年カーボンニュートラルを、どうするということよりも、今も、福島第一原発事故の、かくも未曾有の惨禍・被害があらわれ続け苦しんでおり、狭い地震国の海岸に60基もの原発を建ててしまい、もう一つ、このような事故を起こすことに日々、怯えていることを、世界に正直に正確に訴え、原発こそ見直さなければいけません。計り知れないバックエンドコストと設備費の増加、事故賠償費を要し、電気代上昇必至の原発こそ見直さなくてはいけません。地産地消で安い太陽光発電を、発電所から電気自動車への直接給電等、安いまま地消していき、不確かなカーボンニュートラルなど遅れてもいいと割り切り、地道に増やしていくことが大切です。


(注1) 日本のエネルギー政策において、安全性(Safety)を大前提として、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に達成することを原則としている。

(注2)ある意見や結論を支持、理由付けすること。

  (注3)設計基準を超える、航空機衝突を含む、あらゆる原因で起こる大規模な火災及び爆発による、施設の広範な領域の損失に対処するために、炉心冷却、格納容器封じ込め、使用済み燃料プールの冷却を維持または復旧するために、容易に利用出来るリソースを整備する緩和措置。具体的には、主には、全電源喪失と注水機能の喪失の対策。



2023年12月16日土曜日

「脱炭素」に原発を使ってはいけない。それには、カーボンニュートラルを遅らせることだ。福島第一原発事故の被害の惨状を、隠さず正確に世界に訴えることだ。汚染水の海洋放出を中止して、その覚悟を世界に示すことだ。

◎ 原発の安全防護第5層の「避難」を原発のコストを立てずにしていることは、おかしいことだと思います。原発があるために、根っから悪い放射能をどこまで我慢、甘受するかという「規制基準」にすぎない「安全基準」の「がまん」を、原発のコストを立てないでしていることを、おかしなことだと思います。

◎「ドローバック」とは、辞書には「欠点、不利益、障害」とありますが、以下に、この言葉を使います。原発があり、原発を使う上で、人間の効用にネガティブ、マイナスなこと全てです。原発のコストが高くないと言うのは、このドローバックをコストとしてカウントしていないか、コストになるのを先送りしているだけのことです、次の三つのことが有る限り。

一つは「放射能の影響が隠されたり、未解明なこと」

二つは「廃炉を含め、核のゴミ処分が未知なこと」

三つは地震国の日本の「原発は必ず過酷事故を起こすこと」

 この三つのことに由来するドローバックは、金額で評価し切れるものでなく、金額で評価出来るものでさえ、それが近付き、あらわれ、分かってくるにつれて、コストと電気料金は上昇の一途をたどります。

◎ そして今、その上昇する前のコストの内、止めている原発を動かした場合に増加するコストだけを原発のコストのように、消費者を錯覚もしくは印象操作しつつ、「原発は安い」、「再稼働すれば、電力会社は値上げしなくてよい」、或いは「値下げ出来る」と、原発再稼働のキャンペーンをしているわけです。原発は止まっている時も冷却を要すために掛かる膨大な維持費が、まるで無いかのように。

◎ 福島第一原発事故で停止した原発の膨大な維持費が、事故以来、目立たず問題にならなかった「からくり」を少し説明します。大手電力会社は、固定価格買取制度のもと、太陽光発電設置者が分散電源である太陽光発電を電力系統に繋ぐだけで、その電気を7、8円/kwhの安い回避可能費用で仕入れ25〜30円の電気料金で消費者に売ることが出来ます。電力系統へ接続する費用は、太陽光発電設置者が負担し、太陽光電気の大半は地産地消のため、せいぜい、電力系統の末端の配電網を流れ近隣の負荷で使われているからです。長距離の送電を要す太陽光電気も、送電線容量は十分に余っているからです。送配電施設は、長年、電気料金を支払ってきた国民の資産です。

 この太陽光電気の売り上げと仕入れの差額が、停止原発の膨大な維持費に充当されてきました。それは、アンシラリーコスト(需給一致をとるための周波数調整にかかる費用)を除いて10兆円ぐらいです。これは、太陽光発電の価値、ひいては賦課金です。

◎ 上に述べた文中の「コスト」を「危険」の文字に置き換えてもう一度読んでみると、危険は、ひそみ続けて計り知れません。「危険」のあらわれた「事故被害」は隠されたり、放ったらかしにされています。多くの危険が、これから子孫に、あらわれるばかりです。だから、「脱炭素」に原発を使ってはいけません。2050年カーボンニュートラルだけが「脱炭素」ではありません。2050年カーボンニュートラルは、中国並みに10年或いは、それ以上、遅らせることです。危険は人間だけでなく生きとし生けるもの全てに及びます。地球も生きています。

◎ 福島第一原発事故で、かくも未曾有の惨禍・被害があらわれ続け苦しんでいること、狭い地震国の海岸に54基もの原発を建ててしまい、過酷事故を再び起こすことに日々、怯えていることを、隠さず正直に正確に世界に向けて訴えることです。汚染水の海洋放出を中止して、日本の改心の覚悟を世界に示すことです。

◎ 太陽光発電は、コストが安いこと、エネルギーの自立のため、電気自動車の電源としても、拡大が必要です。設置する場所は探し、工夫すればいっぱい有ります。

 原発を必要とする理由は、何もありません、やめなくてはいけません。




2023年9月25日月曜日

東京エリアの需給逼迫は今後ない。柏崎刈原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何も無い。

題 ; 「東京エリアの需給逼迫は今後ない。柏崎刈原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何も無い。政府は両原発の再稼働をしたいがゆえに、意図して、今夏の「東京エリア」の「電力供給予備率」を、安全予備率ぎりぎりの3%に捏造した。」        (上)

 10月2日の朝日新聞の読者欄で、「これまで電力逼迫が原子力発電が必要な理由に使われて来た。しかし、今夏がこんな猛暑でも大丈夫なら、原子力の必要性はあるのだろうか疑問だ。本当のことを知りたい。」という神奈川県70代男性の投稿を読んだ。

 政府の行う「電力需給見通し」において、10年に1回程度の厳気象における最大電力需要の想定値を「厳気象H1需要」という。これで供給量を除し「想定の電力供給予備率」(100%を超過した部分、以下、「予備率」という)を算定する。この予備率が、需要の短期的変動(1時間以内)に備えて安全予備率3%を下回らないよう管理している。「厳気象H1需要」は夏季は「猛暑H1需要」、冬季は「厳寒H1需要」という。

 今夏の予備率は、3月に、他の9電力エリアが十分、余裕がある中で、「東京エリアのみが3.0%で安全予備率ぎりぎりなので予断を許さない」として、予備率4%を目指し(東京エリアの予備率1%は60万kw)、追加供給力を公募した。5月には、火力発電1機の応募と一部電源の補修期間の延長との相殺で3.1%だった。今夏の「猛暑H1需要」は、前年の「猛暑H1需要」に比べ179万kwhもの過去、最大の上方修正が行なわれていた。

 「東京エリア」の夏季の最大需要の過去7年の実績は、2017年 5,380 万kwh、2018年 5,653万kwh、2019年 5,543万kwh、2020年 5,604万kwh、2021年 5,665万kwh、 2022年 5,930万kwh、2023年 5,525万kwh。

 同じく、「猛暑H1需要」は、2017年 5,550万kwh、 2018年 5,637万kwh、2019年 5,671万kwh、2020年 5,653万kwh、2021年 5,660万kwh 、2022年 5,752万kwh、2023年 5,931万kwh。

 前年(2022年)の夏季の最大需要実績は5,930万kwhで、最高気温は猛暑H1想定気温を下回ったにも拘らず「猛暑H1需要」を178万kwh、前年(2021年)の実績を265万kwhと大きく上回った。この高い前年実績を1万kwhだけ乗せ、増加要因の説明も曖昧なまま、今夏の「猛暑H1需要」に用いた。そして、今夏の結果は、史上最も猛暑に拘らず、最大需要は5,525万kwhとなり、想定の「猛暑H1需要」の5,931万kwhを406万kwh、大きく下回った。2018年から2021年の4年間の5,600万kwh前後の水準に戻った。節電要請は出ていた。電力が余っている他の電力エリアからの電力融通は実施しなかった。

 次に、供給の方だが、3月の公募に応募落札した火力発電1機は、広野石油火力2号機60万kwだった。政府が隠して来た東京エリアの石油火力の1機だ。

 東電と中部電力の火力発電部門を統合したJERAの石油火力の全て15機、1,005万kwは、2020年4月までに長期計画停止に入り、その後、必要に応じ再稼働できるように維持管理を続けていたが、政府は全て無くなったものとして、ここ数年の需給逼迫時に際しても1機たりとも再稼働させなかった。この内、大井石油火力3機105万kwを2022年3月に、鹿島石油火力6機440万kwを2023年3月に廃止し、広野石油火力4機320万kwと、中部エリア(中部電力管内)の渥美石油火力2機、140万kwが残っていたが全て無いこととし、大手メディアにもそのように報道させていた。政府の原発推進計画に則ったものである。尚、このことについては、カーボンニュートラルや石油の高価格があっても、需給の必要を差し置いて石油火力を排斥してよいわけがない。カーボンニュートラルに従属する「需給」にすぎない「需給逼迫」を、全く別の大きな理由のように言うのは詐欺的である。何よりも悪いのは、太陽光発電の変動の調整力として必須の石油火力を排斥することは、太陽光発電の普及にストップをかける。

 広野石油火力2号機を募集した方法は、東電パワーグリッドが実施した「KW公募」だった。「KW公募」とは、翌日、需給逼迫が見込まれる場合のみ出力供出に備えておくというものだ。結果は、後述する太陽光発電の想定供給量を、待機するだけで増加するように働いたこの公募において非落札となった電源もあった。なのに敢えて、隠していた広野石油火力2号機を突然、使ったのは、安全予備率ぎりぎりの3%を公募後も変えないために、コントロールし易いので、背に腹は代えられなかったのだろう。

 

題 :「東京エリアの需給逼迫は今後ない。柏崎刈原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何もない。政府は両原発の再稼働の邪魔になる「東京エリア」の13機有った石油火力を、一機を残し廃止した。太陽光発電は必要な時に発電し需給への貢献は大きい。 (下)

 そして、10月に、広野石油火力の残りの1号機(60万kw)と3号機(100万kw )、4号機(100万kw) を廃止した。廃止する直前に、JERAの石油火力は全て無くなったと、1年前の6月に報道させた朝日新聞に、「今夏は石油火力でカバーしたが、今後、高経年の石油火力は問題はある。」と報道させていた。廃止した広野石油火力の3号機、4号機の経年数は、稼働した2号機(43年)より若い、それぞれ34年、28年だ。

 GX推進法を強引に通し、女川原発2号機、島根原発2号機とともに、BWR原発再稼働の最初の関門である、東京電力の柏崎刈羽原発6,7号機と東海第二原発の再稼働を何としてでもしたい政府は、東京エリアの今夏の予備率を、意図して安全予備率ぎりぎりの3%に捏造した。予備率算定の分母は高い前年実績を当て込み、分子の供給力は隠していた広野石油火力2号機を帳尻合わせに公募した。そして、隠していた石油火力が供給力として公然となったからには両原発の再稼働の邪魔になる広野石油火力1号機と3号機、4号機、計260万kw、予備率にして4.3%を容量市場の道をも閉ざし廃止した。

「厳気象H1需要」や前年実績から実績が大きく下げたのは、前年の冬季(2023年1月)の実績5,179万kwhからだ。電気料金の値上げもあって、省エネと節電が構造的なものとして定着しつつある。10月(2023年)に発表された東京エリアの「今冬の需給見通し」(2024年1−3月)において、「厳寒H1需要」は、5,473万kwhで、前年(2023年1月)の「厳寒H1需要」を30万kwh上方修正し、前年実績(2023年1月)を何と294万kwhも上回る。広野石油火力2号機は稼働しない。予備率は4%以上となり、節電要請は出さないということだ。今までの需給逼迫も嘘であるが、今後、需給逼迫はもう無い。

 需給逼迫は今後、無いことを更に裏付けるために、太陽光発電が今夏の「東京エリア」の供給に果たした役割を以下に述べる。

 太陽光発電の予備率に算入する想定の発電量(以下、「想定供給量」という)は、電力広域的運営推進機関が、確率論的に計算した「火力等の安定電源代替価値」からエリア別、月別に毎時一定の係数を定め、設備能力に乗じて算定している。「東京エリア」の係数は、年間平均は10%で7月は23%だ。7月の「想定供給量」は414万kwh(1,800万kw x 0.23)だった。

 最大需要の時、7月18日の14時は、800万kwh発電した。同日の太陽光発電ピーク時(11時)の発電量は1,500万kwh(設備容量1,800万kwの約8割)だった。「想定供給量」を、最大需要時に386万kwh、太陽光ピーク時に1,086万kwh、上回った。太陽光発電の自家消費がピーク時に200万kwh有り、これが、供給量にも需要量にもカウントされず節電になっている。太陽光発電のピーク時の発電割合は、自家消費の節電分を含めて30%((1500+200)÷ (5,525+200))だった。

 太陽光発電の「想定供給量」を超える発電量は、揚水発電の汲み上げ、火力発電の出力低下で需給対応した。公募に落札した広野石油火力2号機は、その発電能力60万kw相当の、「想定供給量」を超える発電量を、燃料ミニマムで殆ど待機するだけで供給力として生かした。東京エリアの企業が持つ2,000万kwの自家発電を太陽光発電の調整に用いる政府からの要請は無かった。

 414万kwhの「想定供給量」が、天候が悪く減少したり無くなった時の逼迫の恐れに関しては、夏は、太陽光発電の出力が曇天や雨天で伸びない場合は気温もそれほど上がらず、電力需要も伸びない。つまり、太陽光発電の出力と電力需要の間には強い正の相関があり夏季は「想定供給量」の減少による逼迫の心配はない。冬季は、太陽光発電の出力と電力需要の間には負の相関がある。しかし、冬は夏の6割ぐらいしか発電しないことと、最大需要の時は曇天や雨天であることを織り込み、冬の「想定供給量」の係数は数%しかなく想定供給量の減少は、殆ど折り込みずみだ。「今冬の需給見通し」における「想定供給量」は、僅かに1月は59万kwh(1,800万kw の3.3%)、2月は9万kwh(1,800万kw の0.5%)だ。

 原発が夜も無駄に発電するのに対し太陽光発電は、電気の必要な時に発電し需給への貢献は大きい。太陽光発電をフルに生かし抑制を減らすことが重要になる。それには、一定発電しか出来ない原発を入れないことはもちろん、蓄電池の普及とデマンドレスポンス、の他に、電気自動車には太陽光電気を電力系統を介さず直接、給電することが肝要になる。

 電気は十分に足りている。原子力の必要性は無い。他の9電力エリアだけでなく、東京エリアも需給逼迫は今後ない柏崎刈羽原発6,7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何も無い。















2023年9月10日日曜日

経産省が、汚染水について、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」という意味の発言をしました。


(上)                                  

 先月、7月6日、会津若松市で行われた汚染水に関する住民説明・意見交換会で、経産省が、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」という意味の発言をしました。

「陸上保管が何故出来ないか」というテーマで、質問者が次のように言いました。「場所さえ確保出来れば、長期陸上保管がベストだという思いは我々と同じですね」と。それに対し、経産省の木野参事官が「陸上保管が出来ればそれがいい。」と答えました。

 今まで、経産省は、タンク建設に3年かかるとか、浮き屋根から雨水が混入するとか些細な理由を付けて、長期陸上保管は出来ないとしてきました。それが、この回答は、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」と変わりました。

 6月に、中国から、汚染水を「安全無害というなら、何故、日本国内の湖に流さないのか」、フィジー国から「安全というなら何故、日本国内に留め置かないのか」と抗議が有りました。7月4日に出た、日本政府が頼りにしていたIAEA包括報告書では、「正当化」評価において海洋放出の全責任は日本政府に有るとされ、IAEA自らは責任回避されました。グロッシ会長が、この報告書の説明に韓国に行った時、一番怒られたことは、代替案を評価していないということでした。こうした海外の批判に経産省は追い込まれ、7月6日の会津若松市で行われた会で、陸上保管は、やりさえしたら出来て、海洋放出より良いと白状したのです。

 続いて、同じ質問者が長期陸上保管する場所として、福島第一原発に隣接する中間貯蔵施設が有ると言うと、木野参事官は、「双葉、大熊町の住民の心情を考えると、復興の妨げになるタンク建設は難しい。」と言いました。

 しかし、これは大きな間違いです。双葉、大熊町は、復興に希望が持てる状況ではないからです。


(下)

 双葉・大熊両町で3.11前、2万人近くいた人の帰還している人は、わずかに双葉町60人、大熊町426人です。100人のうち2、3人しか帰還していません。家、建物が有っても、夜、電気がついていないので人が住んでいないのが分かります。灯っている電気は街灯や道路灯ばかりです。帰還している人は高齢者ばかりで、この人達が亡くなった時、双葉、大熊町は無人化します。ばら撒かれた放射能を除染しても取り切れなくて、また、これからも核汚染を断ち切れない所に、故郷でも人間は還らないんです。原発事故で除染して戻るという処置は福島第一原発事故が初めてでした。(注1)。それは無理だと分かりました。双葉、大熊町だけでなく、強制避難した20km内の12市町村全体でも帰還率は約2割です。失敗です。ましてや、強制避難基準の20ミリシーベルトを帰還基準に当てています、

 もう元に戻ることのない故郷の土地が、これ以上、事故被害が漁業者に、全国、世界へ広がるのを食い止め、原発をやめることにも繋がる汚染水の長期陸上保管のために使われれば、双葉・大熊町民の本望ではないでしょうか。中間貯蔵施設(注2)は4300人を追い出し国が接収して、1600人の地権者と土地を売却した人々がいます。これらの人々は、除染土用に国に接収された段階で、そこに汚染水タンクが建とうが、トリチウムが減衰する期間の100年伸びようが、大した違いでなく、むしろ、同じ理由から、また、自らの意思で行えば、汚染水タンクが巨大な墓石にも似て亡くなられた人々の鎮魂の意味も持ち、本望ではないかと思います。

 食物連鎖による生物濃縮した魚介類を人間が連鎖の最後に加わり内部被曝し子々孫々に遺伝的障害を及ぼすから、汚染水を流してはいけません。領土的紛争を防ぐため、正々堂々と近隣諸国に対せなければなりません。海洋放出は、近隣諸国に喧嘩を売るようなことです。戦争に向かい易くなります。

 最後に、福島第一原発事故を小さく見せたい。廃炉の跡地を更地にし綺麗にし、事故の跡形を消したい、こうして、廃炉を難しくし、汚染水を出し続ける。汚染水を海洋放出することと福島第一原発を石棺にしないことと同じです。

(注1)スリーマイル島原発事故では、居住区域の強制避難も除染も無かった。チェルノブイリ原発事故では半径30キロ内の住民は強制退去し除染は無く今も無人のまま。

(注2)双葉町(面積5,142ha)と大熊町(面積7,871ha)の海岸部。福島第一原発を取り囲み、海岸と南北に通る国道6号の間の1,600haの土地。 福島県内の除染土と10万ベクレル以上の放射性廃棄物を持ち込み埋める。30年後(2045年)に移される県外の最終処分場の目処はついていない。      因みに、長期陸上保管に要する土地面積は70ha :   今後、1日70トンの汚染水が発生し続けるとした場合、2011年を起点に、トリチウム濃度が千分の一に減衰する期間の120年(半減期12年を10回)が、経過する間に発生する汚染水は410万トン、これを貯められる10万klタンク41基を建てられる土地面積。



2023年6月3日土曜日

女川原発2号機の運転差し止め訴訟判決は、政府や被告の範疇のことであり既に自明になっている「原発は過酷事故を起こす」ということを、今更、住民に立証責任を課す頓珍漢な判決です。GX脱炭素電源法が立証してくれているので、住民が立証する必要は有りません。


 女川原発2号機運転差し止め訴訟判決が、5月24日に却下されました。運転差し止め請求の理由は、避難計画の実効性が無いということです。仙台地裁は、原告が避難の前提となる過酷事故が起こることを立証していないという理由で、避難の実効性の有無に立ち入ることなく、差し止め請求を棄却しました。

 しかし、原発が過酷事故を起こすことは、福島第一原発事故を起こし安全神話から覚めて、自明となっています。そして、過酷事故の起こる頻度は、どのように原発を利用していくかということ、つまり、国の原子力政策に大きく従属します。「可能な限り原発依存度低減」という方針下にあっても、原発が動く限り、原子力災害対策特別措置法で過酷事故を前提として対策が講じられてきました。否、対策を強いてきました。また、エネルギー基本計画は、福島第一原発事故級の事故を2,000炉年に1回(50機が40年寿命運転して1回)、想定したもとで、2030年原発比率20〜22%か決められています。そして、この度、国の責務として原発を推進するという原子力利用の大転換の中で、政府は、原発は過酷事故を起こすことを法律に初めて明文化しました。

  仙台地裁判決から1週間後に国会可決されたGX脱炭素電源法の中で、原子力基本法に原発の基本方針の一つとして、その条文を追加しました(注)。政府は、福島第一原発のような事故を再び起こし、それでも原発を止めないで使い切っていくことを、国民に受け入れるように過酷事故があると条文に宣言したのです。原子炉等規制法と電気事業法を改定し、運転開始後40年を超えた稼働が普通になり、過酷事故の可能性は急激に増大します。


(注)原子力基本法 (基本方針)第2条第3項

 エネルギーとしての原子力利用は、国及び電気事業者が安全神話に陥り、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故を防止することができなかったことを真摯に反省した上で、原子力事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、これを行うものとする。


2023年4月12日水曜日

政府は、東京エリアの今夏の電力需給逼迫見通しにおいて、供給量からJERAの石油火力発電を隠し、さらに、需要量も不正をして、やっと、安全予備率ぎりぎりの3%をでっち上げました。

 3月30日に、政府が今夏の電力需給見通しを発表しました。7月の予備率は、猛暑のケースで、北海道と東北エリアが8.7%、中部、北陸から、九州エリアが11.7%、沖縄エリアが22.3%の中で、東京エリアのみが、安全予備率の3%ぎりぎりで、厳しい、これから、火力発電を公募すると言っています。しかし、JERAの石油火力発電が応募することは有りません。

 政府は、東電と中部電力の火力発電部門を統合したJERAの、石油火力発電を隠して来ました。2020年4月までに、JERAの石油火力発電所の全て15機1,005万kwを長期計画停止しました。維持管理を続けており動かせるのに、政府は、今まで一機たりとも再稼働せず、ここ数年の電力需給逼迫を演出して来ました。朝日新聞とNHKにも、これらは無くなったと報道させて来ました。カーボンニュートラルだと言っても、石油が高いからといっても、需給上の必要を差し置いて良いものではありません。それに、需給逼迫を避ける火力運転の燃料消費は少ないです。

 長期計画停止した15機1005万kwの内、大井石油火力3機105万kwを2022年3月末に、鹿島石油火力6機440万kwを今夏の需給逼迫見通し発表の翌日、2023年3月末に廃止しました従って、広野石油火力4機など計6機460万kwを、今夏も隠しています。これは予備率にして、東京エリアは火力発電1機相当の60万kwが1%ですから、7.6%になります。

 もう一つ、政府が予備率見通しを作為的に低くしていることが有ります。

 東京エリアの2022年度の冬季、今年1月は、5月時点の予備率見通しマイナス0.6%が出た後、火力発電が公募され積み上げられ、9月時点で4.1%まで改善し、当月は、節電要請は出されており、見通しの前提と同じ厳寒になって、需給逼迫は回避されました。回避された要因は、供給力を積み上げたことだけではありません。それ以上に、需要が大幅に減少したことでした。厳寒となったものの、前年に比べ需要が、1月は5.3%、2月は8.7%も減りました。この減少には構造的に継続する、継続出来るものが多くあると思います。しかし、今夏の見通しの最大需要量は、この減少を少しも反映せず前年同期の0.4%ほど高めに設定しています。東京エリアの予備率の分子の供給量からはJERAの石油火力を隠し、分母の需要量も不正に過大にして、やっと、安全予備率ぎりぎりの3%を算出したわけです。

 今夏の電力逼迫見通しが発表された同じ日に、日本原子力文化財団が、原子力に関する2022年9月から10月に行った世論調査結果を公表しました。「原子力は必要」というイメージを持つ人が、東日本大震災以降、初めて30%を超えた。その背景には「電力需給逼迫」と「エネルギー価格上昇」が影響しているとしています。

 政府は、「電力は十分に足りている、この先もずーと」という事実が、国民の意識の中に定着することを、今、一番恐れています。恐れながら、原発必要の機運醸成のための偽の世論形成、則ち、国民と諸外国に対し、政府は自分達が原発をやりたいことを、国民の意志の信託だと言いたいのです。

 尚、日本原子力文化財団は、同調査で汚染水についても聞いており、「漁業者の理解を得られるまでは、海洋放出を行うべきでない」という国民の意識が浮き彫りになりました。

海洋放出することについて、「国民の理解を得られていない」は51.9%、「漁業を中心とした関係者の理解を得られれるまでは行うべきでない」は42.3%を占め、「国民の理解は得られている」(6.5%)、「関係者の理解を得られなくとも行うべき」(5.6%)を大きく上回りました。


JERAの石油火力発電所の15機1,005万kw

広野石油火力  福島県双葉郡広野町

 1号機(60万kw 重油・原油 1980.4

 2号機(60万kw 重油・原油 1980.7)

 3号機(100万kw 重油・原油 1989.6)    

 4号機(100万kw 重油・原油 1995.1)

鹿島石油石油  茨城県神栖市 (2023年3月廃止) 

  1号機( 60万kw 重油・原油 1971.3) 

  2号機( 60万kw 重油・原油 1971.9)

  3号機( 60万kw 重油・原油 1972.2)

     4号機( 60万kw 重油・原油 1992.4)

    5号機(100万kw 重油・原油 1974.9)  

    6号機(100万kw 重油・原油 1975.6)      


大井石油火力  東京都品川区八潮  (2022年3月廃止)

   1号機(35万kw 原油 1971.8)

    2号機(35万kw 原油 1972.2)

   3号機(35万kw  原油 1973.12)

渥美石油火力  愛知県田原市 

   3号機(70万kw 原重油 1981.5)

 号機(70万kw 原重油 1981.6)

    計  15機  1,005万kw



2022年12月7日水曜日

電気は、もう十分に足りており、原発は、ずーと全く必要ない。政府と大手電力会社が石油火力発電を排すのは、原発推進のために、太陽光・風力発電にストップをかけること。今、原発をやめて、太陽光と風力発電の本気の普及に向けて舵を切る時。

 

(上)

 5月頃から、夏よりも冬の方が需給逼迫が厳しく大変だと騒ぐ根拠になっていた、東電管内の来年1月(来月)のマイナス0.6%の予備率は、今は、安全予備率の3%を超えて4.1%に上がっています。要因は、福島県沖地震で止まっていた新地火力1、2号機の復帰や、姉崎火力5号機を夏に続いて冬も再稼働すること等です。来年前半に新設される姉崎1,2号機、横須賀火力の試運転の電気(kwh)の利用を折り込めば、6%にも上がります。政府は何故か、まだ心配と言っており節電要請を出しました。この逼迫対応で再稼働されるものも、稼働しているものも、LNG火力か石炭火力だけです。これらより他にJERAの石油火力の全て、900万kwが在ります。広野火力1〜4号機、鹿島火力1〜6号機など12機で、原発9基分で予備率にして15%です。これを、政府は隠しています。

 東電管内の火力発電会社のJERAは全ての石油火力発電15機1,000万kw(この内、大井火力の3機計100万kwは本年3月に廃止)を、2020年4月までに約5年かけて計画停止しました(注)。もちろん、老朽火力が多いですが、広野火力3号機(100万kw)1989年、4号機(100万kw)1995年、鹿島火力4号機(60万kw)1992年と、わりと新しいものも有ります。東電管内のピーク需要約6,000万kwの1.000万kwです。これらは将来の稼働に備えて全て維持管理が続けられており、動くのに、政府(政府というより資源エネルギー庁)は1機たりとも使わないと決めて隠し、需給逼迫を演出しBWR原発を再稼働しようと、ここ数年、画策して来ました。続けて今、運転期間の延長と原発のリプレースを決めてしまおうとしています。     

 因みに、同じことを今、九州電力が、川内原発1、2号機の40年運転期間の延長のために、豊前石油火力他を止めて、やっています。

 火力、中でも一番切りやすい、石油火力を排すのは全くもって、間違いです。極めて短い時間の需要ピーク時や需給接近時の供給力調整は、出力を柔軟に上げ下げ出来る火力、特に石油火力が行います。また、太陽光や風力発電の発電量変動を吸収調整するのは、火力です。二つの意味の調整の、特に後者のために、石油火力のkw(設備能力)を確保しておき、太陽光や風力発電を存分に普及させなければなりません。石油火力のkwh(発電量)は、後述しますが、自ずと少ないんです。もちろん、一定発電しか出来ない原発には、「前者の調整」は出来ないし、逆に「後者の調整」の幅を狭め、太陽光発電の抑制を増やし、火力発電を押し退けてしまいます。従って、政府と電力会社のやっている石油火力の排除は、太陽光や風力発電の普及にストップをかけます。もちろん、「後者の調整」は、蓄電システムやデマンドレスポンスに置き換えていく過渡期に必要なものです。

 ところで、6%まで上がった東電管内の1月の予備率には、太陽光発電が供給力として殆ど含まれていません。全国の電力需給の調整と予備率の管理を担当する「電力広域的運営推進機関」によると、「安定的に見込める供給力」を評価して、1月は4%の調整係数を、設備容量に乗算したものを予備率に織り込んでいるということです。「太陽光発電を導入することにより安定電源を代替できる量」ということですが、太陽光発電の稼働率であれば1月は9%(年間は13%)だから、4%という調整係数もよく分かりません。管内の太陽光発電の最大発電実績は1,400万kwですから、仮に設備容量を1,500万kwとしても、その4%、僅かに60万kwhしか見込んでいないわけです。しかし、とにかく、晴天であれば、冬のピーク時は設備容量の6、7割、900万〜1,000万kwh は発電します。雨天の時のことを考えて予備率には見込めないということでしょう。しかし、JERAの石油火力900万kwで、需給逼迫時の出力アップに備えて短期間、待機して「後者の調整」をすればいいです。石油燃料消費量も最小限に抑えられます。ましてや、JERAの石油火力は、設備の償却を既に終え稼働率低下に伴う損失は殆ど有りません。「電力広域的運営推進機関」は、「JERAの石油火力は、東電パワーグリッドが申告する供給力の中身の問題なので関知しない」と言います福島第一原発事故後、原発を代替するエネルギーにしようと、国民が賦課金を負担して普及してきた太陽光発電を、政府は端から予備率に生かそうとしないで、その予備率が低いから原発が必要と言っているわけです。

 また、東西連系線の容量増強をわざと遅らせ、原発のために太陽光電気を捨てています。今頃になって、原発回帰の支持になると見て地域間連系線の新増強計画を発表しています。

 (注)政府・電力会社は「太陽光発電が増え、その変動を吸収調整するため稼働率が低下し経済性が悪化したから石油火力発電を廃止或いは停止した。」と言っています。


(中)

 福島第一原発事故を負っており、ウクライナ紛争を見ている、今、私達は、太陽光発電と風力発電の本気の普及に向けて舵を切る時です。調整電源となる火力発電を確保しながら。

 太陽光発電の普及は政府の言うカーボンニュートラルのためではありません。太陽光発電は、

 まず、安いからです。原発や火力発電のように値上げしなくていいです。太陽光発電のコストは、今、kwh、10円以下です。これからまだ、下がります。太陽光発電の耐用年数は35年くらいはあるのに、政府は、長年、20年と誤魔化してきました。変動費の少ない電源のコストに耐用年数は重大です。火力発電の、これから上がるのは変動費です。

 太陽光発電を普及する二番目の理由は、一極集中発電から自立する電源だからです。マイクログリッドは再エネと蓄電池が核になります。

「再エネ賦課金」は太陽光発電のコストでもなければ、普及に掛かる費用でも有りません。固定買取価格が電気料金の半分以下(事業用11円、住宅用17円/kwh)になっても尚、再エネ賦課金がかかること自体おかしいと思いませんか。「再エネ賦課金」は止まっている原発の維持費になっています。2012年、全量買取制度が始まって以来、19兆円の賦課金を国民が負担しています。ほぼ、同じ期間の停止中の原発の維持費が12兆円です。再エネ買取において、固定価格での買取費用を回避可能費用まで、賦課金が原資で補填される大手電力会社は、その交付金を受けて、それを原発の維持費に使っています。固定価格買取制度の開始直後2,3年の冗長な固定買取価格は、制度の意義とは裏腹に、太陽光発電を排除し原発を進めるため、経産省が太陽光発電のコスト高を放任したのです。そして、高い交付金を20年間受けて原発維持しながら、同時に、これを、太陽光発電の汚点、否、固有の欠点として、いつまでも宣伝しているのです。しかし、今、大事なことは、この冗漫な固定買取価格の賦課金は埋没コストだということです。

 原発のコストが安いと言うのは、ドローバック(注1)を費用としてカウントしていないか、費用を先送りしているだけのことです。それは、次の三つのことを挙げれば十分でしょう。放射能の影響が未解明なこと、核のゴミ処分が未解決なこと、原発は必ず過酷事故を起こすこと(注2)。これらのドローバックの金額評価は仕切れるものでなく、出来る範囲でさえ、分かってくるに連れて原発のコストは上昇の一途をたどります。しかも、今、彼らが安いと言っているのは、こうした結果のコストの、止めているコストと稼働させた場合のコストの差だけを見て言っているのです。

 そして、三番目の理由として、太陽光発電は「究極の自給」だからです。紛争や戦争と不即不離の供給不安が有りません。そして、需要家により近い自給ですから、需要家の節電やデマンドレスポンスの意欲と効果を高めます。防災非常用電源にもなります。送配電の負荷も少ないです。

 そして、四番目の理由は、安全、安定だからです。原発のように放射能を出さないことは、もちろん、分散電源のため、一極集中電源の原発のように、原爆に変わる危険や脆弱性が有りません。

  電気自動車は、系統に依らないで、太陽光発電所からの直接給電を目指すことが大事です。原発電気を給電しないためと、太陽光発電とのシナジーを生かすためです。直接給電は、住宅の屋根上パネルからの自家消費が主流になりつつあります。ショッピングモールの屋外駐車場でも始まっています。住宅用太陽光と電気自動車のセット販売や完全自立型EVステーションも出ています。何しろ、系統から給電するのと直接するのとでは、料金が格段に違います直接給電により、全国の電気自動車が総じて、昼は太陽光発電量の増減に応じて給電し、夜には放電のみすることになります。つまり、全国の電気自動車が巨大な蓄電池になり、太陽光発電の変動性を調整する、否応無いが負担の無い「デマンドレスポンス」が、生来的に仕組まれます。

 太陽光発電を設置する所は、山や森林を切り拓かなくともいっぱい空いています。設置に適した場所を探す目で、街を歩いてみて下さい。農村だったら、農地の上にいっぱい有ります。使用済みパネルの処分の危険を始め、いろんな障害はあるでしょう。しかし、原発のゴミ処分等に比べれば無きに等しいです。どこまで普及できるか、少しでも多く設置するようにやってみることが今、一番大事なことです。火力発電を、調整電源として、また、原発代替のためのバランスとして伴いながら。その火力発電を、蓄電システムとデマンドレスポンスを進めることにより、可能な範囲で置き換えながら。

 原発と太陽光発電の相互排他的な関係の中で、原発が太陽光発電を貶めることにより自分が浮かび上がるということが、様々な場面で、巧妙に行われています。(上)で述べた、太陽光発電を主力電源にと、国民に賦課金を負担させながらも、需給逼迫時の予備率に殆ど生かさないで、その予備率が低いから原発が必要と言っていることもその一つです。制度開始時の冗長な固定買取価格を、埋没コストにも拘らず、資金流用していることは棚に上げ、いつまでも太陽光発電の欠点のようにあげつらうこともそうです。東西連系線の拡大をわざと遅らせ、九電や中国電力の太陽光電気を、太陽光発電への嫌がらせのように捨てていることもそうです。更に言えば、太陽光発電のコストが安いから、メリットオーダーからも最優先されなければならないところ、コストが安いから限界的電気に追いやられるという倒錯が、原発贔屓のもと巧妙に様々に行われています。太陽光発電が変動電源であることを考慮してもです。このことが再エネ賦課金を通じて行われている事象を、次の(下)で述べます。                 

    (注1)「ドローバック」とは「欠点、不利益、障害」 

    (注2)過酷事故の想定について、エネルギー基本計画の本文には記述は有りませんが、電源ミクスの原発20〜22%の根拠になる原発コストに、2000炉年に1回(50機が40年寿命運転して1回)、福島第一原事故級の事故を見込んでいます。実態でも、安全防護の第五層を当然のように、周辺自治体に避難対応を強いています。しかし、過酷事故の想定は、「限りなく原発依存度を低減する」方針の下であり、岸田GXの下では意味が違ってきます。文言として初めて、原子力基本法の第2条3項(基本方針)に、「原子力事故の想定を常に想定し」と記されようとしています。


(下)の一

 大手電力会社は、FIT太陽光電気を固定買取価格で買い取る費用と「回避可能費用」との差額の補填金を毎月、算定され交付されます。これを、「再エネ買取交付金」と呼ぶとします。「再エネ買取交付金」の原資が「再エネ賦課金」です。大手電力会社が「再エネ買取交付金」を停止中の原発の維持費に充てていることは本稿の(中)で述べました。尚、これは、再エネの調達価格となる「回避可能費用」と販売価格の「電気料金」の差額のキャッシュフローだけではありません。

「回避可能費用」の意味は、FIT再エネ電気を買い取ることにより、発電・調達を免れ回避される費用ということです。それが太陽光電気の評価にしようということです2012年に固定価格全量買取制度が始まって、「回避可能費用」は、全電源平均か火力か原発か」、「全コストか可変費だけか」、「再エネの供給力計上はどうか」、などの要素を考慮し決められました。一極中発電所において発電する、送配電前のコストです。分散して在り、地産地消の太陽光発電も、わざわざ、一旦、電気を一極集中発電所に買い取り集められてから需要家に送配電して返されるようなものです。

 2014年に一回の見直しを経て、2016年の電力全面自由化に合わせ、政府は回避可能費用を、市場価格に連動するようにしました。「市場価格連動」は、再エネ電気が無かった時、その相当分を卸市場から電気を調達しており、再エネ電気が有れば、まず、その卸市場からの調達を止める即ち回避するという考え方です。激変緩和措置というのは、2016年以前の2度の固定価格による回避可能費用を「市場連動価格」にソフトランディングするための措置です。賦課金が止まった原発の電気を補い、ましてや、止まった原発の維持費に充てられていることからして、回避可能費用は原発のコストと考えられなくもありません。 

 「回避可能費用」は低すぎるのではないかという問題が当初から有り、河野太郎氏らも問題視ししていました。2016年から市場価格連動になりましたが、2度の固定価格よりも更に下がってしまいました(注1)。この問題は、賦課金は単に電気料金との差し換えだからと、厳密に検証されない感が有りました。結果としては、2012年に制度が始まって以来2021年まで、10年間近く、ずっと7、8円ぐらいで推移して来ました。そして、上がったのか、上げたのか、卸市場価格が高騰で2021年の10月から「回避可能費用単価」は18円から30円/kwh(30分毎、1日48コマ平均)ぐらいの範囲で推移しています。

 従って、2022年の再エネ買取交付金」は大きく減ります。2018年以降の固定買取価格(2018年度:事業用18円/kwh、住宅用24円/kwh)にあっては、「回避可能費用単価」が「固定買取価格」を逆転します。この電気の買取においては「再エネ買取交付金」はマイナスにさえなり、大手電力会社は「電力広域的運営推進機関」(注2)に「再エネ買取交付金」を返納します。「再エネ買取交付金」の交付額は翌年度の賦課金の算定基礎になるので、2023年度の「再エネ賦課金単価」は大きく減りますこの高い回避可能費用が続けば、賦課金は2022年度の3.45円/kwhの「再エネ賦課金単価」をピークに、2030年(注3)を待たず、減少に転じます。

 大手電力会社は、停止中の原発を維持する原資を、だんだん貰えなくなり原発を再稼働する他なく、結局、政府と大手電力会社は、「 福島第一原発事故後、約10年の間、享受して来た低い回避可能費用を諦め手放し卸市場価格を吊り上げ、新電力を葬り顧客を奪い返す、と同時に値上げし、原発再稼働に向けて踏ん切りをつけよう 」ということです。

 尚、太陽光電気の買取りにおいて、2017年度から「送配電買取り」として送配電事業者が、間に入りますが基本、パススルーで、かつ、大手電力会社の小売と未分離、実質一体なので、上の説明では省きました。

 

     (注1)2012年と2015年に始まる2度の固定価格の回避可能費用は激変緩和措置が5年有り、2021年度から完全に市場価格連動になりました。

     (注2)「電力広域的運営推進機関」は、全国の電力需給の調整、予備率の管理に加え、2022年度からFIT費用負担調整業務も担当することになりました。

     (注3)太陽光発電の事業用20年、住宅用10年の固定価格買取期間から、制度開始から18年目の2030年が賦課金のピークと見られていました。


(下)の二

 以上のように書きましたが、この内容を、資源エネルギー庁に確かめると、回避可能費用はそうならないから、賦課金は減らないと言うのです。「回避可能費用単価」は、その電気を買取る時のコマ(30分)の卸市場価格に依り、買い取る時間帯は、余剰の太陽光電気が市場に沢山、売却されており、1日48コマ平均の「18円から30円/kwh」よりも大きく値を下げているからだと言うのです。調べて見ると、資源エネルギー庁の言う通りでした。買取りする時間帯の「回避可能費用単価」は、余剰太陽光電気が市場に捨てられることの多い九州エリアが一番安く、東京エリアも、0.1円/kwh以下(最低入札価格は0.01円/kwh)のコマが15コマ続くことさえ有ります。政府は、低い回避可能費用をまだ諦めていなかったようです。

 送配電事業者が太陽光電気を買取り、市場に売り、大手電力会社が市場から買うという「市場価格連動」ですが、大手電力会社は、その電気を市場から買っていないのかとさえ疑われます。これでは回避可能費用の決まり方は、原発の手前、決して優先されない太陽光発電の「共食い効果」に付け込む「市場価格連動」でしかありません。

 そして、これは自分達、大手電力会社だけのことなのです。新電力がFIT太陽光電気を調達する「特定卸供給」は、卸市場を経ないで、送配電事業者から直に市場価格供給を受けるので調達価格は大きく上昇しています。新電力が自前の太陽光発電所で発電した電気も、一旦、送配電事業者に固定買取価格で売り、逆鞘になっても、高い市場連動価格で送配電事業者から卸供給を受けなければなりません。新電力がFIT太陽光電気を発電・調達するのを諦めさせ、太陽光電気とその顧客を、大手電力会社が囲い込みます。

 大手電力会社は、「市場価格連動」を太陽光発電の「共食い効果」で歪めて、安い回避可能費用を享受し続け、本来、減らなくてはならない賦課金は減らず、今まで通り、多額の買取交付金を受けて原発の費用に使い続けます。

 太陽光発電は、末端の配電線を自由に開放し、その地域一帯で自家消費し、新電力に、非FIT・非FIP・非「送配電買取」でコスト通りの調達・販売をさせるべきです。送配電網は総括原価方式の電気料金を払って来た国民の資産だから出来るはずです。そして「再エネ最優先」に舵を切る時です。


 資料

「市場価格高騰を踏まえたFIT制度上の制度的対応」(資源エネ庁 2021.2.16)

   の5ページ : 「FIT電気が、消費者に届くまでの流れ」図

   の8ページ : 「回避可能費用単価の算定方法」表