2024年11月28日木曜日

「ウラン濃縮を自由に行う権利を放棄出来ないから、核燃サイクルをやめられず、原発もやめられない。」と、元資源エネルギー庁長官が発言しました。

 エネルギー基本計画の改訂に向けた議論が大詰めを迎えて、 朝日新聞が、第5次エネルギー基本計画(2018年)策定の時の資源エネルギー庁長官にインタビューしたものです。11月28日の朝刊です。

 元資源エネルギー庁長官は、「原発をやめることは核燃サイクル、再処理をやめること」と言い、これはその通りでしょうが、さらに、「日米原子力協定で、日本はウラン濃縮を自主的に行う特別な権利を、再処理をすることを条件として得ている。」と言い、だから、「原発をやめることは、そのウラン濃縮を行う権利を放棄することになる。」と言っています。「ウラン濃縮の権利を放棄することは、日米同盟をどうするのかという議論にもなる。」と言っています。また、「再処理施設があり、使用済み核燃料の中間貯蔵施設を置いた青森県にも説明が出来ない」と言っています。

 以上を「本質的な議論」と、元資源エネルギー庁長官は言い、「東京電力福島第一原発事故後、こうした本質的議論を尽くした上で、民主党の原発を限りなくゼロにしたいと言う方針を目標にとどめた」と言います。そして、「その後、第4次エネルギー基本計画(2014年)に盛り込まれ維持されている「原発依存度を可能な限り低減」という文言の「見直し」は、常に考え続けるべき論点であり、議論すべき時期を見極めることが大事だ」と言います。 締めくくりは、今、審議している第7次エネルギー基本計画において、三つのことが、焦点になるだろうと挙げています。一つは、 脱炭素シナリオとその電源の確保、二つは電力需要増加への対応、三つには、エネルギー自給です。

 元長官の発言は、第7次エネルギー基本計画が基本政策分科会で審議されている内容と、全くかけ離れています。元資源エネルギー庁長官とは言え、第5次エネルギー基本計画の策定を担当した責任者が、「S+3E」(注1)以外のことによって、今、審議中のエネルギー基本計画の方向を決する最重要な文言の見直しをサポート(注2)しています。基本政策分科会における「S+3E」を原則とした議論が、嘘だと言っているも同然です。

 折しも、柏崎狩羽原発7号機は,、仮に再稼働しても、特重施設の完成が間に合わず10月には4年間の長期停止に入ります。そして、7号機の代わりに、6号機を再稼働し、これも、特重施設の無いまま、4年間、運転しようとしています。特重施設の規制は米国のB5b(注3)の規制を日本に適用したものです。日本においては、大型航空機衝突やテロ以上に、原発がミサイル攻撃を受ける危険の方が、大きいです。この原発の根源的な危険は、ウクライナ紛争でも明らかになりました。さらに、元資源エネ庁長官の言っているようなことであれば、日本の原発がミサイル攻撃を受ける危険は増大するばかりです。

 資源エネルギー庁は、原発の再稼働に躍起で、太陽光発電の普及は上の空なばかりか、太陽光発電を貶めることにより原発を浮上させることをやっています。以下に説明します。 

 優先順位を原発の下位に置いて、燃料はいらず放っておいて発電するほど安い太陽光電気を抑制し捨てています。原発の夜に余る電気を低料金で売り、昼の需要を夜にシフトする需要調整をしています。

 地産地消の太陽光発電の電気を、回避可能費用と言って卸市場価格で買い取り、託送コストを乗せて販売しています。その分、増える賦課金を、太陽光発電のコストのように言いながら、停止中の原発維持費に流用しています。

 FITは、太陽光発電のコストがいくら下がっても、発電者の投資意欲を増すことはありません。売上もコストベースの固定買取価格だからです。回避可能費用が固定買取価格を逆転する場合は、取り過ぎた賦課金が電気消費者に還されます。FIPは、固定買取価格を、通常それより安い卸市場価格に変えるだけです。このため、太陽光発電の普及が、今、止まりつつあります。  

 地産地消の太陽光電気を、そのまま地消することが肝です。安さが、そのまま生かされます。昼の日照時の需要が自動的に増えます。近時、地産地消通り消費すれば、10円/kwh以下で消費出来ます。自家消費やPPA、を増やしていきます。中でも、電気自動車へ太陽光発電所から直接給電すれば、燃費(電費)はガソリン車の8分の1ですし、バッテリーが全国の電気自動車のバッテリーが大きな蓄電池になり、太陽光発電の変動性を吸収するよう給電します。

抑制があるから、太陽光発電をもう増やせないとうことではありません。抑制する時間帯は一時で、そのほかの時間帯の発電が大きいからです。

 資本費が殆どの太陽光発電の、耐用年数を適当に短く見積もるなどして、賦課金の国民負担はお構いなく高コストを演出してきました。

 技術力、生産量ともに世界トップだった国内メーカーを守らず、太陽光発電パネルの国産化に失敗しました。FITの量産効果が及んだのは中国パネルでした。環境を破壊するメガソーラーの設置場所の統制を欠いてきました。中国資本の太陽光発電設備が増えるに任せています。

 こんなことで、再エネが増えるわけがありません。

 元長官が締めくくりに挙げた三つの焦点には、「S+3E」のうち、安全性(S)と経済効率性(E)の観点が有りません。安全性の「S」は他の「E」とは別格の大前提です。ましてや、福島第一原発事故の現状を見て、安全でない原発は自然を毀損し滅失し続けるという点で、「S」は、一つの 「E」の「環境適合」を包含します。 CO2温暖化説は定かなものではありません。仮に、そうだとしても、原発の環境破壊の方が桁違いの問題です。2050年カーボンニュートラルを、どうするということよりも、今も、福島第一原発事故の、かくも未曾有の惨禍・被害があらわれ続け苦しんでおり、狭い地震国の海岸に60基もの原発を建ててしまい、もう一つ、このような事故を起こすことに日々、怯えていることを、世界に正直に正確に訴え、原発こそ見直さなければいけません。


(注1) 日本のエネルギー政策において、安全性(Safety)を大前提として、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に達成することを原則としている。

(注2)ある意見や結論を支持、理由付けすること。

  (注3)設計基準を超える、航空機衝突を含む、あらゆる原因で起こる大規模な火災及び爆発による、施設の広範な領域の損失に対処するために、炉心冷却、格納容器封じ込め、使用済み燃料プールの冷却を維持または復旧するために、容易に利用出来るリソースを整備する緩和措置。具体的には、主には、全電源喪失と注水機能の喪失の対策。



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