2023年9月10日日曜日

経産省が、汚染水について、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」という意味の発言をしました。


(上)                                  

 先月、7月6日、会津若松市で行われた汚染水に関する住民説明・意見交換会で、経産省が、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」という意味の発言をしました。

「陸上保管が何故出来ないか」というテーマで、質問者が次のように言いました。「場所さえ確保出来れば、長期陸上保管がベストだという思いは我々と同じですね」と。それに対し、経産省の木野参事官が「陸上保管が出来ればそれがいい。」と答えました。

 今まで、経産省は、タンク建設に3年かかるとか、浮き屋根から雨水が混入するとか些細な理由を付けて、長期陸上保管は出来ないとしてきました。それが、この回答は、「長期陸上保管は場所があれば出来て海洋放出に優る」と変わりました。

 6月に、中国から、汚染水を「安全無害というなら、何故、日本国内の湖に流さないのか」、フィジー国から「安全というなら何故、日本国内に留め置かないのか」と抗議が有りました。7月4日に出た、日本政府が頼りにしていたIAEA包括報告書では、「正当化」評価において海洋放出の全責任は日本政府に有るとされ、IAEA自らは責任回避されました。グロッシ会長が、この報告書の説明に韓国に行った時、一番怒られたことは、代替案を評価していないということでした。こうした海外の批判に経産省は追い込まれ、7月6日の会津若松市で行われた会で、陸上保管は、やりさえしたら出来て、海洋放出より良いと白状したのです。

 続いて、同じ質問者が長期陸上保管する場所として、福島第一原発に隣接する中間貯蔵施設が有ると言うと、木野参事官は、「双葉、大熊町の住民の心情を考えると、復興の妨げになるタンク建設は難しい。」と言いました。

 しかし、これは大きな間違いです。双葉、大熊町は、復興に希望が持てる状況ではないからです。


(下)

 双葉・大熊両町で3.11前、2万人近くいた人の帰還している人は、わずかに双葉町60人、大熊町426人です。100人のうち2、3人しか帰還していません。家、建物が有っても、夜、電気がついていないので人が住んでいないのが分かります。灯っている電気は街灯や道路灯ばかりです。帰還している人は高齢者ばかりで、この人達が亡くなった時、双葉、大熊町は無人化します。ばら撒かれた放射能を除染しても取り切れなくて、また、これからも核汚染を断ち切れない所に、故郷でも人間は還らないんです。原発事故で除染して戻るという処置は福島第一原発事故が初めてでした。(注1)。それは無理だと分かりました。双葉、大熊町だけでなく、強制避難した20km内の12市町村全体でも帰還率は約2割です。失敗です。ましてや、強制避難基準の20ミリシーベルトを帰還基準に当てています、

 もう元に戻ることのない故郷の土地が、これ以上、事故被害が漁業者に、全国、世界へ広がるのを食い止め、原発をやめることにも繋がる汚染水の長期陸上保管のために使われれば、双葉・大熊町民の本望ではないでしょうか。中間貯蔵施設(注2)は4300人を追い出し国が接収して、1600人の地権者と土地を売却した人々がいます。これらの人々は、除染土用に国に接収された段階で、そこに汚染水タンクが建とうが、トリチウムが減衰する期間の100年伸びようが、大した違いでなく、むしろ、同じ理由から、また、自らの意思で行えば、汚染水タンクが巨大な墓石にも似て亡くなられた人々の鎮魂の意味も持ち、本望ではないかと思います。

 食物連鎖による生物濃縮した魚介類を人間が連鎖の最後に加わり内部被曝し子々孫々に遺伝的障害を及ぼすから、汚染水を流してはいけません。領土的紛争を防ぐため、正々堂々と近隣諸国に対せなければなりません。海洋放出は、近隣諸国に喧嘩を売るようなことです。戦争に向かい易くなります。

 最後に、福島第一原発事故を小さく見せたい。廃炉の跡地を更地にし綺麗にし、事故の跡形を消したい、こうして、廃炉を難しくし、汚染水を出し続ける。汚染水を海洋放出することと福島第一原発を石棺にしないことと同じです。

(注1)スリーマイル島原発事故では、居住区域の強制避難も除染も無かった。チェルノブイリ原発事故では半径30キロ内の住民は強制退去し除染は無く今も無人のまま。

(注2)双葉町(面積5,142ha)と大熊町(面積7,871ha)の海岸部。福島第一原発を取り囲み、海岸と南北に通る国道6号の間の1,600haの土地。 福島県内の除染土と10万ベクレル以上の放射性廃棄物を持ち込み埋める。30年後(2045年)に移される県外の最終処分場の目処はついていない。      因みに、長期陸上保管に要する土地面積は70ha :   今後、1日70トンの汚染水が発生し続けるとした場合、2011年を起点に、トリチウム濃度が千分の一に減衰する期間の120年(半減期12年を10回)が、経過する間に発生する汚染水は410万トン、これを貯められる10万klタンク41基を建てられる土地面積。



0 件のコメント:

コメントを投稿