2014年11月1日土曜日

太陽光発電システムの性能と価格


A.しくみ
  1. シリコン :シリコン結晶
  2. セル   :太陽の光エネルギーを電気に変換する約10cm四方の太陽電池   (基本単位)、モジュールの表面が碁盤の目のように格子状になっているが、   碁盤の目の一つ
    1つのシリコン結晶がセルになる単結晶
    多くのシリコン結晶がセルになる多結晶
        どちらも固体のシリコンを溶かし冷やし固めて製造
        多結晶は製造過程で出た不要シリコンを再利用して簡略的に製造
        セル表面に切れ目多い。
     単結晶
     多結晶

大量生産可能、低コスト
変換効率高い
シリコン原子結合が部分的不安定変換効率高くない
シリコン純度上げれば耐用年数増
耐用年数は若干単結晶に勝る。
3.モジュール:セルを直列で接続した大体1m四方のパネル (製造単位)
4.アレイ  :モジュールを組合せた1セット (設置単位)
5. システム :発電単位

多結晶モジュールは単結晶に比べ、変換効率が悪く即ち単位面積あたり発電量が劣るが、中国等の安い労働力と製造方法で大量生産が可能なのでコスト低減効果はその欠点を補って余りある。その結果、単位面積で1w発電する価格が6割方になり圧倒的に有利である。
住宅用は価格の高い単結晶、産業用は安い多結晶という構図がある。これは、住宅用としては屋根に乗せることから、軽いもので狭いところにできるだけ出力を得たいということで変換効率が高く小さく軽い単結晶が選ばれる。住宅用は補助金が付いたので高価な単結晶でも耐えられた。購入先が将来も存続し保証やメンティナンスがしっかり行われるという観点で抵抗の無い単結晶中心の国内メーカーを選ぶ、またモジュールとパワコンの一社生産が可能な国内メーカーのものを選ぶということがある。
多結晶メーカーの場合、製造設備はどこも殆ど同じで、モジュール検査(表面の傷や亀裂)がどれだけ厳密かが性能差に現れる。単結晶といえども海外生産が中心で、セルからモジュールまで通して純粋の国産は昭和シェルの化合物系CISモジュールのソーラーフロンティアーぐらいである。化合物系CISモジュールはシリコン以外の素材の銅、インジウム、セレンを使用しており、耐用年数が最大で製造使用エネルギーが少ないので価格安く、気温や影の影響を受けにくいが、変換効率では結晶系に劣る。パナソニックのHITは単結晶シリコンとアモルファスシリコンを併用することで電荷の消滅を低減したハイブリッド型であり変換効率高く耐用年数長く熱の影響に強い。他結晶系の1.1倍ぐらい発電する。京セラは多結晶にこだわる。東芝250wとシャープ245wは共に米国サンパワー製の単結晶のパネルで同じ製品である。電極を、太陽光を遮る表面から裏面に設計した「バックコンタクト方式」により性能でパナソニックのHITの240wに伍す(HITと共にN型太陽電池セル使用、他結晶系はP型)。カナディアンソーラー、トリナは海外メーカーでありながら単結晶も有る。中国、韓国生産で価格を抑える。
単結晶と多結晶の区分よりも国内と海外メーカーの区分で二重価格構造があるようである。


B.モジュール(パネル)の性能比較

太陽光発電システムは、モジュールのアレイと発電された電気をまとめる接続箱と直流電流を家庭で使える交流電流に変換するコンディショナーとメーターからなる。モジュールの価格の違いがシステムの価額の違いの殆どである。販売業者に見積もりを出させた場合、複数メーカーのモジュールを代えて数ケース提出することが多い。モジュールの機能は、面に降り注ぐ太陽光を取り込み電気に換えることから発電量は面積に比例するから、その性能はより少ない面積で多く発電するものが良いということである。
メーカーや業者提示の予測発電量(シミュレーション)は恣意が入りうるので、この1㎡当たりの比較は信頼性に劣るので、示されている発電性能に関するデータから比較しうる発電数値を次に述べるように工夫する。
 
公称最大出力は、JIS標準試験条件、即ちスペクトルがエアマス(AM)1.5(*2)、モジュール温度25度C、放射照度1000/㎡において算出されたモジュールの出力。
この条件は、ほぼ1月の晴天時の昼の発電条件に近いのだろうが、実際、周囲温度、設置された方位や角度からJIS条件の状態になることはないので、まず此の点で公称最大出力(kw)と最大発電量(kwh)は乖離する。モジュール単独としてはこのJIS条件と実際の違いに起因すること及び後述する三つのロスの内の温度ロス(温度補正)により乖離し、更にシステム全体としては残りのコンディショナーロスと回線その他ロスの二つのロスにより、最大発電量(kwh)は公称最大出力(kw)の1時間を下回る。例として弊宅のパナソニックの公称最大出力230wモジュール12枚で2.76kwのシステムでは1時間当たり発電量(kwh)の瞬間最大値は2.5kwh(90%)である。各社の製品説明にはシステム実際発電量は最大でも公称最大出力の70%~80%になるとある。
モジュール製品間の性能比較を、パネル1㎡あたりの「公称」のシステム発電量で比較する。公称最大出力を出発点として、性能を決める二つの要素である変換効率とロス率を加味して求める。即ちJIS条件と実際設置状況での環境の違いは製品間比較には関連しないし、捕らえようも無いこともあり無考慮とし、敢えて「公称」のシステム発電量という。
耐用年数、即ち耐久性はここでの性能には含めない。

モジュール製品に表示されている公称最大出力は、その製品固有の面積でのものである。中には切り捨てて10w刻みあるいは5w刻みで表示している場合もあるがこの余剰は看過する。面への照度(w)を電気(w)に何%変えるかという指標が変換効率(*1)なので、JIS条件1㎡当たり1,000wの放射照度の時の出力である表示の公称最大出力を1㎡当たりに換算するには、(1,000w 変換効率(%))となる。
(*1)変換効率:
    端的にいえば、太陽光エネルギーの何%を電力に換えられるかを示す指標。
    1㎡あたり1000Wの日射を受けた時何W発電するか測定しその割合。
    この場合、発電電力は公称最大出力のJIS基準でいう。つまり、条件として照度以
    外にスペクトルはエアマス(AM)1.5(*2)、モジュール温度25度Cが加わ
    る。従って、変換効率=モジュール公称最大出力÷(モジュール面積X1000w/㎡)という
    関係。つまり、公称最大出力はモジュール製品寸法の面積での発電電力だが、こ
    れを、寸法を同じ面積1㎡に切り揃えたときの発電量の1000Wに対する割合が変
    換効率になる。逆にいえば、変換効率%に1000を乗じ単位をWに置き換えたもの
    が1㎡寸法当たりの公称最大出力となる。
(*2)エアマスとは太陽光が地上に入射するまでに通過する大気の量に関する尺で、1.0
    は光の入射角が90度(真上から照射)の時の大気の通過量でAM1.5はその1.5
    倍、入射角としては41.8度。この通過量が各波長の含み具合を左右し発電量に
    影響する。

*ロス:太陽電池損失には次の三つがある。
  1. 素子温度損失 (温度補正係数)(%)
    表面温度が高くなり過ぎると発電効率が落ちるというモジュールの特性。
  温度損失というよりも、正しくは補正係数である。公称最大出力のJIS標準試験
  条件のモジュール温度25度Cからの乖離を補正する係数だからである。気温ではなく
  モジュール温度25度Cであり、晴天時照射を受ける結果パネル表面が熱を持つのは当然
  で、JIS条件は特に高いものではなく、冬場でも補正するのにロス(マイナス)の
  係数となる。

VBHN240SJ21
パナソニック
SPR-250NE-WHT-J
東芝
LPV-200-BLK-J
東芝
NB245AB
シャープ
PV-MA2200K 
三菱

HSL60P6-PB-1-250
ハンファQセルズ
TSH-265DC05A
トリナソーラー
月のパターン
A
B
B
A
A
A
A
寒い季節
5.8
2.4
10.0
8
10
10
10
中ぐらいの季節
8.7
6.1
14.3
12
15
15
15
暑い季節
11.6
9.7
18.5
16
20
20
20
季節別発電量
見合平均
9
15
13
16
16
16
                    
パナソニックの多結晶のモジュールは10,15,20%.。シャープ245w及び東芝250wはサンパワーの技術を導入、東芝200wは単結晶であるがOEM
季節別ロスについて季節別発電量重み付けして平均

パターンA
パターンB


発電量割合
寒い季節
123
27
122
中ぐらいの季節
45
1011
34
35
911
暑い季節
69
39
68

2.パワーコンディショナー損失: 5%

3.回線その他ロス: 5%
コンディショナー損失と回線その他ロスの製品別の差は大小1%ぐらいの幅があり、モジュールとコンディショナーの組合せは選択できることもあり、この二つのロスの差については無視する。
太陽電池損失は1,2,3合計となる
 パナソニックの例)(1-0.09) x (1-0.05) x (1-0.05) =0.82   18%


従って、まとめるとモジュールの発電性能は
  1. 公称最大出力を同じ面積(1)に揃える。
  2. 公証最大出力からロス分を控除する。
の二つの手順で製品間の同列比較ができる。
変換効率(%)1000 X(1-ロス率)] 算出したワット数を比較すればよい。

   公称最大出力
     ↓   外形寸法の補正
   1㎡あたり公称最大出力( = 変換効率(%)x 1000 
     ↓   太陽電池損失を控除
          素子温度損失、パワーコンディショナー損失、回線その他ロス
   1㎡あたりロス補正後公称最大出力(公称のシステム発電量)

抑制問題
今話題になっている電力会社が計画的に行う太陽光買取抑制は別に述べる。ここでは、高い太陽光の高い発電中に常時起こる可能性の有る出力抑制に関するものである。
電気機器の安全のため法律上供給電圧は101-6v95107v)で管理される。売電は逆潮流させて送り返すため供給電圧を少し上回る電圧にコンディショナーで調整される。余剰電力はまず数軒で1グループの近隣の住宅で使われ余った分が電線に流れていく。近隣の家庭の電気器具の安全のため、通常、売電電圧にも同じ最大107vという上限がコンディショナーの整定値とされる。近隣の需要が減ると電力会社の供給電圧が自然に上がり、その時、電力会社が高い範囲で電圧を管理していると107vに接近することが有る。制定値107vの売電電圧が電力会社の供給電圧を上回ることができなくなり、逆潮流できなくなり、コンディショナーは自ら発電を抑制するしくみとなっている。電力会社によって太陽光発電電力の制限電圧をどこで測定したものかコンディショナーの出口か引込み柱か幅がある。東京電力管内はコンディショナーの出口で107vでなく109vとしており抑制は少ない。中国電力は107vを譲らないので抑制の発生が多くなる。中国電力は原発の比率が一番低く、再エネ特措法の買取義務の当事者意識に低いことが原因と思われる。もし、抑制が頻繁に起こりせっかく発電した電気を無駄に捨てるようなことが多ければ、筆者に伝えてくれれば解決するよう力添えしたい。

太陽光発電の稼働率(=設備利用率)
 1kw当たり年間発電量:1,100kwh
   1,100kwh / (1kw x 365days x 24h)=12.6%

C.モジュールの価格比較
 A.の性能で得られたw数1wあたり、価格を求める。
    モジュール1㎡あたり価格 ÷ Aのw数

  1㎡あたりロス補正後公称最大出力(公称のシステム発電量)
    ↓    1㎡あたり価格を割る
  ロス補正後公称最大出力1wあたり価格(公称のシステム発電量1当たり価格)


性能比較

モジュール
公称最大出力
w
メーカー
シリコン
/多結晶
外形寸法
cm
1㎡当たり公称最大出力(w)
最大モジュール変換効率(%)
ロス(%)
1㎡当たりロス補正後公称最大出力(W)
1㎡当たりモジュール価格千円
 )内:モジュール価格

(A)


(B)

(A)/(B)
(C)=
(A)/(B)/1000
(D)
(E)=(C)x
1,000x
(1-(D))
(F)
VBHN240SJ21
240
パナソニック

1,580x812
187
18.7

18
153
32.7
(42.0)
SPR-250NE-WHT-J
250
東芝
1,559x798
201
20.1
16
169
49.8
(62.0)
PV-200V-BLK-J
200
東芝
1,318x983
154
15.4
23
119
27.8
(36.0)
NB245AB
245
シャープ

1,559x798
197
19.7
22
154
34.6
(43.0)
HSL60P6-PB-1-250
250
ハンファQセルズ
1,636x988
155
15.5
24
118
17.4
(28.2)
TSH-265DC05A
265
トリナソーラー
1,650x 992
162
16.2
24
123
16.3
(26.6)
()モジュール価格は、20138月から20141月までに複数の業者から得た見積もりから引用、推定。円安、工事人工代増などがあり2014年12月現在、若干の下がりに留まっている。
性能で東芝250wが一番だが、国内メーカーではパナソニック240wが価格で逆転する。シャープ245wはパナソニックに近い。
海外メーカーのものの安さが鮮明。国内メーカーの7割方である。

D.年間発電量とシステム全体の回収期間

太陽光発電システムの「年間発電量」は次式である。
  年間発電量=公称最大出力kwh x(1-ロス率)x 平均傾斜日射量(kwh/㎡・日) x365日
平均傾斜日射量(kwh/㎡・日)とは、1日あたり1平米に何kw太陽が放射するかの年平均 4kwh//
   1日24時間のうち、せいぜい10時間の強弱のある日射を1000/㎡の強度に
   集約すると10時間が4時間に短縮されると理解するとよい。

見積もり比較表中1kwあたり年間発電量は業者のシミュレーションに基づく。
業者が提示してくる発電シミュレーションは上記A.の製品ごとのロスがベースとなり正確に計算されているかをチェックする必要がある。
パナソニックVBHN240SJ21の例)
年間発電量=公称最大出力(kwh)  平均傾斜日射量(kwh/㎡・日)x(1-ロス率)
      x365日
1kwあたり年間発電量:  960w( 240w x 4 )x (1,000/960) x  4.0 (kwh/㎡・日)x (1-0.09) x (1-0.05) x (1-0.05)x 365日=1,199kwh
住宅用6kwの見積もり
モジュール
公称最大出力
w
メーカー
シリコン
/多結晶
モジュール
枚数
総出力
金額
(万円)
1kw当たり価額(千円)
上段:補助金適用後
下段:適用前
1kw当たり年間発電量(kwh)
( )内:計算発電量
回収期間(年)
NB245AB
245
シャープ
26
6.37
271
390
(425)
1,094



同上
205
287
(322)

10
NQ198AA
198
シャープ
27
5.346
233
401
(436)
1,096

NU172CB
172
シャープ
45
5.202
225
397
(432)
1,054

ND-S5AIR
185
シャープ
25
4.625
184.7
364
(399)
1,065

VBHN240SJ21
240
パナソニック
24
5.76
214.9
338
(373)
1,136
(1,199)

PV-MA2200K
220
三菱
26
5.72
178
276
(311)


                   
野立て50kwの見積もり
モジュール
公称最大出力
w
メーカー

モジュール
枚数
総出力
金額
(万円)
単価/kw
設置角度
1kw当たり年間発電量(kwh)
回収期間
HSL60P6-PB-1-250
250
ハンファQセルズ
164
41
1,257
(*1)
307
10
1,100

HSL60P6-PB-1-250
250
ハンファQセルズ
192
48
1,461
304
7
1,082

TSH-265DC05A
265
トリナソーラー
168
44.5
1,280
(*2)
288

15
1,127
9.6
CS-236B31
236
長州産業
168
39.6
1,200
303
15
1,172

LPV-200V-BLK-J
200
東芝
252
50.4
1,780
353
10
1,063

SRM296P-72N
296
サニックス
132
39.1
11,096
284
10
1,038

(*1)樹木撤去、運搬・草刈500,000円追加
(*2)エコめがね400,000円追加。

回収期間への発電収入と設備費の影響は、先に計算した住居用、産業用それぞれの回収期間の計算において比例するとして計算しても大きな違いは無い。


D. その他
  需要より供給の多い所に設置した発電所はそのままでは抑制が頻繁に起こるが、低圧の場合、柱状変電器を付けさえすれば、昇圧逆潮し、抑制を無くせる。





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